農村経済研究
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2020年度 第56回福島大会報告特集 大震災後の福島農業再生の到達点と課題-復興の歩みを振り返り今後の10年を展望する-
福島県における震災後の農業経営高度化の動き
-顧客との信頼関係構築による原子力災害への対応-
原田 英美
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2021 年 39 巻 1 号 p. 30-38

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抄録

東京電力福島第一原子力発電所の事故は,営農活動を継続できた福島県の農業経営体にも,価格低下 や販売不振などの経済的実害を及ぼした.このような経営体の中には,商品の見直しや販売先の開拓に取り 組み,新たな顧客と信頼関係を構築し再生を果たしている経営が見受けられる.本稿では,原子力災害によ る被災という社会状況の中で起きたこのような動きを,震災後の福島県における農業経営高度化の一つの方 向性と捉えて,3 つの事例に基づいて検討した. 本研究では,農業経営の高度化を,家族で農業生産のみを行う伝統的家族経営に対して,農地の集積・再 編,新技術の導入などによる規模の拡大や,販売・加工・サービスに取り組む事業多角化により,経営環境 に適応しながら経営の発展を志向する動きとしてとらえた.また,顧客との関係は,①取引の継続性,②関 係の相互作用性,③社会的状況や文脈,の視点からとらえた. 検討したのは,A:福島市で桃とリンゴを栽培する個人経営,B:福島市で酒米や稲WCS,飼料用米など を栽培する法人経営,C:郡山市で施設野菜,養豚,施設イチゴなどに取り組む法人経営,の3 事例である. 3 事例は震災後,品目や商品の変更,風評に負けない商品の開発,新たな販売先の開拓などを,復興支援の 官民事業も活用しながら進め,顧客との信頼関係を築きながら継続的な取引の拡大につなげてきた.このよ うな経営展開過程を,顧客との信頼関係の構築に着目して原子力災害の対応行動として理解した.

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© 東北農業経済学会
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