日本ロボット学会誌
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摩擦を考慮した多指ハンドの剛性モデルによる安定把握解析
金子 真今村 信昭横井 一仁谷江 和雄
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1989 年 7 巻 3 号 p. 161-171

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抄録

剛性モデルに基づく多指ハンドの安定把握に関するこれまでの解析では, 指先と対象物との間の摩擦が考慮されていないため, これらの解析結果を現実的な把握系に対応させると安定性に関して矛盾が生じる.例えば, 摩擦のない把握系で安定性が保障されたとしても, 摩擦を考慮すると回転運動に対し把握が不安定になる場合がある.
本論文では各指を同じ接触点を通過する2本の直交仮想ばねkxi, kyiで置換えて, 摩擦のある把持系の安定性について論じている.対象物内に回転中心をあらかじめ設定し, 仮想ばねkyiの方向は, その延長線が回転中心を通過するように定められる.そしてこうして定められたすべての仮想ばねを合成して, 把握系の剛性行列をもとめ, この行列の正定性を調べることにより安定条件を明確にしている.この解析により, 仮想バネkyiは平衡状態で対象物に内力を与えるのに重要な役割を演じ, 仮想ばねkxiは回転に対する安定性に必要不可欠であることが示される.また, 実際に把握パラメータを決める際には, 対象物に過大な力が作用しないように平衡状態における内力の上限を規定する評価関数を導入している.最後に, 本研究のために特別に設計された2本指ハンドモデルを使って評価実験を行い, 解析の妥当性を確認している.

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