不安症研究
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総説
DSM診断基準における不安症の変遷―半世紀の流れの中で―
塩入 俊樹
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2018 年 10 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

本稿では,「DSM診断基準における不安症の変遷」と題して,米国精神医学会の公式診断基準であるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の最初の版であるDSM-Iが世に出た1952年から,現在使われている最新のDSM-5が出版された2013年まで,約60年にわたる不安症(AD)の概念・分類の変遷について,述べる。ADはDSM-I(1952)やDSM-II(1968)までは,それぞれ「精神神経症反応」,「神経症」として分類されていた疾患群の一部で,DSM-III(1980)に初めて用いられた疾患名である。当時は,強迫症(OCD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども不安症に含まれていたが,様々な紆余曲折を経て,両者はDSM-5(2013)において,ADとは別の独立した疾患群となり,現在のADの形に落ち着いたと言ってよい。その変遷には,各疾患の病態メカニズムの相違等も関連しているため,最後に,AD, OCD, PTSDについての生物学的病態についても筆者の考えを述べてみたい。

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© 2018 日本不安症学会
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