強迫症の症状改善に効果的な認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)の実施率は非常に低い。さまざまなCBT形態やあり方が開発されており,強迫症への曝露反応妨害法(Exposure and Response Prevention, ERP)が実践された場合には一貫して有効性が確認されている。日本においては,強迫症のCBTを実施した場合に保険適用される医療職は,医師と看護師のみである。公認心理師が精神療法であるCBTを実施した場合にも保険適用が認められることで,精神科診療所での強迫症患者へのCBT実施率が高くなる可能性がある。混合CBTの開発研究と研修事業との組み合わせにより,認知行動療法家のCBT実施負荷を低下させることができ,強迫症患者にも利益が大きい。今後の強迫症のCBT研究では,当事者ニーズ調査により開発されたCBTについて,安全性と有効性検証はもとより医療経済評価研究により費用対効果を調べることが期待される。
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