不安症研究
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巻頭言
総説
  • 橘川 応之, 志村 哲祥, 中島 一樹, 井上 猛
    2024 年16 巻1 号 p. 2-11
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    運動と身体的健康との良好な関連はよく知られており,精神的健康との関連に対する認識も例外ではない。しかし,「どの程度の」運動が効果的であるかといった具体的な指標は確立されないままでいる。本稿では,運動が不安やその他の精神的健康の指標に与える影響について先行研究の知見を紹介した。また,我々の研究チームが算出した至適運動時間及び至適運動時間からの乖離という指標が与える影響についても紹介した。運動の精神的健康に与える用量反応効果が明らかになれば精神疾患の一次予防や治療に有益となることが期待される。

  • 宇佐美 貴士, 松本 俊彦
    2024 年16 巻1 号 p. 12-20
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    物質使用症の中で,ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下,BZRA)を対象薬物とする患者が増加している。BZRA使用症の中でも,過剰服薬が問題となる有害な使用や,コントロールを失い社会的にも障害が生じる依存が臨床上問題となることが多い。BZRA使用症の患者は女性に多く,20代や30代といった若年世代に多いといった特徴がある。これまでの物質使用症患者とは属性が異なっており,治療についても単に断薬を目指せばよいというわけではなく難渋することが多い。これらを踏まえ,本論文ではBZRAの依存性物質としての特性についてと,生きづらさの対処として自己治療的に使用してしまう使用症患者の特徴について概説する。そして使用症からの回復に必要なことを,BZRAの減量法を含めまとめたい。

  • 向井 馨一郎, 松永 寿人
    2024 年16 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    強迫症(obsessive compulsive disorder: OCD)は,反復的な思考や行動「強迫観念」と「強迫行為」を特徴とする精神疾患である。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor: SSRI),認知行動療法(cognitive behavioral therapy: CBT),および,その併用療法が標準的治療として推奨されているが,本邦のOCDに適応のあるSSRIは2剤のみであり,CBTの普及も十分とは言い難い。OCDの治療は長期化しやすいが,標準的治療の治療効果を最大化し,再発・再燃予防の観点から治療開始後2年間に完全寛解に至ることが望ましい。そのために,治療初期における心理教育が治療全体の最も重要な介入のひとつである。本稿では,症例呈示をまず行い,OCDを中心に,本邦における強迫症診療の初期段階における心理教育について総括したい。

  • 栗田 幸平
    2024 年16 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    社交不安症における治療の第一選択として認知行動療法が推奨されているが,治療メカニズムについて安静時脳機能結合から考察した報告はほとんどない。本稿では,社交不安症に対して個人認知療法を行い安静時脳機能結合により治療メカニズムを考察したKurita et al.(2023)の研究を紹介した。研究の結果,社交不安症患者は個人認知療法後に視床と前頭極の安静時脳機能結合が低下し,治療前の視床と前頭極の安静時脳機能結合が治療反応を予測する可能性が示唆された。研究結果を活用することが,個人認知療法における治療メカニズムの理解と,認知行動療法を受ける社交不安症患者の治療効果を予測するバイオマーカーとなる可能性が期待される。

  • 伊藤 知也, 尾形 明子
    2024 年16 巻1 号 p. 38-47
    発行日: 2024/11/30
    公開日: 2025/03/01
    ジャーナル フリー

    会食恐怖は,人前での食事に強い恐怖を感じる症状であり,症例を中心に報告がされている。本論文では,会食恐怖に関する先行研究をレビューし,会食恐怖研究のこれまでの動向を整理するとともに,今後,どのような研究が必要であるかについて検討を行った。会食恐怖は社交不安症の1つとされているが,嘔吐恐怖や摂食障害など周辺疾患との関連を検討していくことで,その臨床的概念がより明確になると考えられた。また,症例のレビューを通して,会食恐怖症例には男性の割合が多い,青年期の発症が多い,本人が自覚するきっかけと発症までに潜伏期間があるといった傾向が見られたが,限られた症例のみで会食恐怖の実態を判断するのは現時点では難しく,有病率や症状の特徴などを明らかにする実態調査や周辺疾患との関連,症状の発症や維持に関連する要因などを検討する研究を実施していくことが会食恐怖の病理や治療法を明らかにするうえで必要だと考えられた。

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