不安症研究
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巻頭言
総説
  • 稲田 泰之, 楠 無我
    2023 年 15 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    バーチャルリアリティを用いたエクスポージャー療法(VRET)は,近年不安症への治療として,その有効性に関するエビデンスが蓄積しつつある。一方,その実装可能性の検証はまだ不十分であり,実証科学的なアプローチによる研究も期待される。本稿では,精神科診療所でVRETを試験的に実施した経験を振り返り,実証研究の中で用いられるフレームワークであるConsolidated Framework for Implementation Researchを一部参照しながら,今後の展望および課題を整理した。

  • 岸田 広平, 松原 耕平, 肥田 乃梨子, 石川 信一
    2023 年 15 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    問題を未然に防ぐための予防的介入は,目の前にある問題を解決する治療的介入と比較して,効果が見えにくいために実施が遅れることが多い。しかし,子どもたちのメンタルヘルスの悪化やコロナ禍の影響を踏まえると,学校教育現場における予防的介入の実装が求められている。本総説では学校でのメンタルヘルス予防教育の現状と課題について,こころあっぷタイム(Up2-D2: Universal Unified Prevention Program for Diverse Disorders)の社会実装を通じて解説を行った。本総説では社会実装における研究面での課題として,有効性の確立,測定指標の選定,対象者の拡大,構成要素の洗練化と短縮化,既存プログラムからの選定,若手研究者の育成,について議論した。加えて,実践面での課題として,キーパーソンの確保,授業時間の確保,実施者の養成,運営資金の調達,広報活動の実施,について議論した。

  • 高江洲 義和, 山田 恒, 家 研也, 黒沢 雅広, 青木 裕見, 稲田 健
    2023 年 15 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    ベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の抗不安薬は精神科・心療内科に限らず,広く一般診療科で処方されている。同薬剤の多剤併用・長期処方による依存形成のリスク,認知機能低下,転倒リスクの増大などが指摘されているが,実臨床においていったん多剤併用・長期処方に陥ると,身体依存により減薬は容易ではなく,長期処方から脱却できないケースも少なくない。そのため,我々は抗不安薬の出口戦略の実装化に向けて,令和3年度~4年度にかけて厚労科研研究「睡眠薬・抗不安薬の処方実態調査ならびに共同意思決定による適正使用・出口戦略のための研修プログラムの開発と効果検証研究」を実施した。本研究では多領域・多職種による取り組みにより臨床現場におけるBZDの実践的指針としてエキスパートコンセンサスの作成し,BZD適正使用・出口戦略の研修プログラムを開発することにより実装化を目指した。

  • 宮崎 哲治, 石原 武士
    2023 年 15 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    双極性障害(BD)が併存する強迫症(OCD)患者(OCD-BD患者)の疫学,臨床的特徴,治療について概説した。OCD患者におけるBDとBD患者におけるOCDの有病率は高い。OCD-BD患者の場合,純粋なOCD患者と比べ,他の精神疾患が多く併存し,機能も低下し,OCDの病識も低い。一方の疾患に対する薬物療法がもう一方の疾患の症状を悪化させる可能性があるため,OCD-BD患者の治療は困難を極める。OCD-BD患者におけるOCD治療の第一目標は,気分安定薬によって気分を安定化させることである。その他,気分安定薬に非定型抗精神病薬を付加することも有効である。SSRIを使用する際は,躁転などを防ぐために気分安定薬や非定型抗精神病薬を併用し,かつ綿密な監視が必要となる。OCD-BD患者におけるOCD治療薬としてのメマンチンの可能性についても言及した。

  • 松本 一記
    2023 年 15 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    強迫症の症状改善に効果的な認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)の実施率は非常に低い。さまざまなCBT形態やあり方が開発されており,強迫症への曝露反応妨害法(Exposure and Response Prevention, ERP)が実践された場合には一貫して有効性が確認されている。日本においては,強迫症のCBTを実施した場合に保険適用される医療職は,医師と看護師のみである。公認心理師が精神療法であるCBTを実施した場合にも保険適用が認められることで,精神科診療所での強迫症患者へのCBT実施率が高くなる可能性がある。混合CBTの開発研究と研修事業との組み合わせにより,認知行動療法家のCBT実施負荷を低下させることができ,強迫症患者にも利益が大きい。今後の強迫症のCBT研究では,当事者ニーズ調査により開発されたCBTについて,安全性と有効性検証はもとより医療経済評価研究により費用対効果を調べることが期待される。

原著
  • 鈴木 孝, 佐々木 淳
    2023 年 15 巻 1 号 p. 47-57
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    社交不安傾向者は,専門的支援を継続的に利用しにくいことが示されている。専門的支援の初期段階において,援助者の自己開示の効果が示唆されている。しかし,社交不安傾向者が援助者の自己開示に対して,どのような印象を抱くかについては,十分に検討されていない。そこで本研究では,一般成人240名に対してオンライン質問紙調査を実施し,社交不安傾向者が,援助者の自己開示に対する選好や,恐れをどの程度抱くかについて検討した。相関分析およびパス解析の結果,社交不安傾向者は援助者の自己開示に対して恐れを抱きやすく,特に否定的・肯定的な評価に対する恐れが直接的に影響していることが示された。以上の結果より,面接初期においては,クライエントの語りを理解した旨をあたたかく伝えるような,保証の自己開示に限って使用し,それ以外の自己開示については慎重に使用することが有効であると考えられた。

資料
  • 本田 由美, 小松 智賀, 野田 昇太, 長谷川 洋介, 長谷川 明日香, 三塚 志歩子, 川副 暢子, 貝谷 久宣
    2023 年 15 巻 1 号 p. 58-66
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    不安・うつ専門の外来心療内科である当クリニックにおけるマインドフルネスの実践を紹介した。参加自由の単発クラスに加え,マインドフルネスストレス低減法やマインドフルネス認知療法といったコースなど様々な形態で提供しており,心理検査の結果からはいずれもマインドフルネス状態および特性が上昇し,不安やうつの指標の改善が見られた。さらに,患者自身の感想や,講師が受ける印象からは,反応しない態度や観察,落ち着いた心の状態が定着している様子が見られた。考察では,クリニックでマインドフルネスを行うにあたっての諸留意点と,研究・臨床における今後の展望について述べた。

症例報告
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