不安症研究
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巻頭言
総説
  • 大坪 天平
    2022 年 14 巻 1 号 p. 2-11
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    全般不安症(GAD)はもともと残遺カテゴリーから出発し,“心配”を中心とする独立カテゴリーとして再構築された。しかし“心配”は他の精神疾患や身体疾患でもよくみられる症状であり,疾患の中心症状としての特異性がない。また,GADは他の精神疾患とのcomorbidity率が極めて高く,そのdistinct entityとしての存在に疑問を生じずにいられない。そもそも,この40年間,GADの診断基準自体が大きく揺らいでおり,DSMとICDでも大きく異なっていた。GADはうつ病の前駆症状,残遺症状,増悪因子,あるいは重症度指標にすぎないのではないかとの指摘もある。特にわが国においては,GADは積極的に付けられる診断ではない。たとえ,GADの患者だとしても,うつ病や他の不安症,あるいは身体表現性障害などの診断で,治療されているのであろう。中には,多剤併用となって場合もあるかもしれない。このような状況を脱するためには,わが国において,さらなるGADの啓発,GADの適応をもつ抗うつ薬の導入,GADの診療ガイドラインの作成が必要と考えられる。

  • 西 大輔, 佐々木 那津
    2022 年 14 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    コロナ禍は私たちのこころの健康に無視できない影響を与えており,COVID-19感染拡大前と比べて世界中でうつ病は5,320万人(27.6%),不安症は7,620万人(25.6%)増加したことが推定されている。本稿では特に,一般労働者,医療従事者,COVID-19罹患者,妊産婦に焦点を当て,パンデミック下のうつ病・不安症・うつ不安症状に関する先行研究の知見を紹介した。多くの災害がそうであるように,COVID-19はもともと存在していた健康格差やメンタルヘルスの格差を拡大させた可能性が考えられ,今後も継続的な対策が求められる。

  • 富田 望, 熊野 宏昭
    2022 年 14 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    社交不安においては,自己注目と他者注目が症状の維持要因とされているが,社会的場面において2つの注意の偏りがどのような関係にあるのかを示した実証的研究は少ない。本稿では,自己注目や他者注目を視線や脳活動によって可視化することで,両者を比較可能な形で捉えることを目的とした,Tomita et al.(2020)とTomita & Kumano(2021;第2回日本不安症学会学術賞受賞論文)の2つの研究を紹介した。研究の結果,右前頭極と左上側頭回の過活動は対人場面で生じる自己注目や他者注目それぞれの客観的指標となることが示唆された。対人場面でこれらの脳活動をリアルタイムに測定することで,社交不安者の自己注目と他者注目の程度を,本人が自覚していない場合でも予測できることが期待される。また,自己注目と他者注目は独立した構成概念であることが脳の観点から示唆された。

  • 松本 一記
    2022 年 14 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    認知行動療法は最もエビデンスが確立している精神療法であり,うつ病,不安症,強迫症などに対して高い効果が実証されている。対面セッションの有効性のみならず,昨今ではインターネットを介した遠隔条件においても有望な結果が観察されている。インターネットは,もはや欠かすことのできないインフラであり,今後ますますインターネットを介した認知行動療法は発展普及していくであろう。本稿では,国内外でのインターネット認知行動療法についての知見をまとめ,我が国でのエビデンスを中心に紹介するとともに,今後の研究の方向性についても検討したい。

  • 宮崎 哲治, 森 祥子, 井上 蓉子, 田中 賀大, 薬師寺 晋, 石原 武士
    2022 年 14 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    本稿では,統合失調症患者に併存する強迫症状に関する疫学,臨床的特徴,治療について概説する。一般人口に比べ,統合失調症患者における強迫症状の有病率は高い。統合失調症患者に強迫症状が存在することは,予後を悪くし,患者の情動と心理社会的機能に悪影響を与える。強迫症状を伴う統合失調症患者において,強迫症状について病識を欠く患者はわずか15.8%であり,純粋な強迫症患者中の病識を欠く患者の割合と類似している。治療には,薬物療法と曝露反応妨害法を用いた認知行動療法がある。第二世代抗精神病薬の使用によって強迫症状が誘発されている場合,薬物療法としては,原因となっている抗精神病薬の減薬や他の抗精神病薬への変更,アリピプラゾールの付加がある。抗精神病薬誘発性の場合も含め,統合失調症患者に併存する強迫症状についても,SSRIの投与は有益である。

原著
  • 角田 圭子, 高木 潤野, 臼井 なずな, 冨岡 奈津代, 梶 正義, 金原 洋治, 広瀬 慎一
    2022 年 14 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,場面緘黙(SM)児の発話行動を評価する日本版SMQ(SMQ-J)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである。4歳から12歳のSM児の養育者139人を対象に日本語に訳されたSMQ及びCBCL/4-18を実施した。原版SMQは3因子構造であるが,探索的因子分析の結果,4因子が抽出された。「社会場面」と「家族関連場面」の他は,原版の「学校場面」因子が「教師」と「同級生」に区別された。各下位尺度の信頼性が確認された。また,本研究のSM児と冨岡(2016)の統制群101人との比較から,SMQ-Jの判別的妥当性が示された。さらに,SMQ-JとCBCL/4-18との関連から弁別的妥当性は示されたが,SMの程度と不安の高さとの関連性は明確には示されなかった。本研究の結果から,SMQ-Jの信頼性と妥当性が概ね確認され,SM児の発話行動の評定ツールとしての有用性が示唆された。

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