不安症研究
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総説
ICD-11にみる強迫スペクトラムの現在とこれから
松永 寿人
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2021 年 13 巻 1 号 p. 13-23

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抄録

ICD-11に新設された「強迫症および関連症群(obsessive-compulsive and related disorders ; OCRD)」について,強迫症を主とした強迫スペクトラムの導入,あるいは他の不安障害からの分離といったDSM-5でこの領域になされた改訂との連続性を中心に概説した。OCRDは1990年ごろに提唱された強迫スペクトラム概念を基盤としており,これに分類される精神疾患は,「とらわれ」と「繰り返し行為」を中核的病理として共有し,また不安症との差異として,病的不安を必ずしも伴わないこと,妄想的な場合など洞察水準が多様であること,などが特徴的である。さらにはプライマリケアに加え,内科や外科,皮膚科といった一般診療科,美容整形外科など,多彩な臨床場面で遭遇しやすい点もOCRD内で共通している。このため今回の改変は,ICD-11が目指す臨床的有用性を大いに配慮したものであるが,これが実臨床にもたらすメリット・デメリットに関して,その妥当性あるいは信頼性を含め,さらに検討を要するであろう。

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