人工知能学会研究会資料 知識ベースシステム研究会
Online ISSN : 2436-4592
89回 (2010/3)
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適応的推論を生み出す知識の形成: 個人学習・コミュニケーションが果たす役割
本田 秀仁松香 敏彦
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p. 09-

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抄録

人間はTake the best heuristicなどの単純な推論方略を用いることによって適応的な推論ができると先行研究で示されている (e.g., Gigerenezer, Todd, & The ABC Research Group)。これらの研究では人間は正確で十分な量の知識を推論時に用いることができることを仮定している。しかしこの仮定は,人間が推論時にアクセスできる知識量が限定的であることや,忘却,フォールスメモリなどに代表される記憶システムの特徴を考えると,心理学的にみて妥当な仮定とは言えない。そこで本研究では,適応的な推論を行うための知識はどのように形成されているのかを検討した。特に本研究では個人学習とコミュニケーションを行う個人が形成する知識の性質,また推論内容について比較検討を行った。結果として,忘却やバイアスを生み出すような認知メカニズムを人間が持っているという仮定を置いた場合でも,他者とコミュニケーションを行い,知識を交換する個人は適応的な知識を形成し,また適応的な推論を行うことができるようになることが示された。

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© 2010 (社)人工知能学会
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