2013 年 2013 巻 SKL-16 号 p. 03-
本研究では、身体運動をある種の力学系とみなし、その不変的構造の重要性を指摘する力学的不変量仮説(日高, 2013)の立場から、人の複雑なリズム運動の解析を行った。力学的不変量仮説では、身体運動を本質的にある種の力学系とみなし、その座標不変な性質の推定が主たる運動の計算処理であるとする。この観点からは、力学系の不変量の一つであるアトラクターのハウスドルフ次元は、運動の特徴付けとして重要な役割を果たすことが予測される。これを検討するため、人のリズム運動時の速度データの時系列解析を行った。その結果、複数の演奏者や運動速度条件に関わらず、リズム運動を行う手先や楽器部に特徴的な次元が推定された。この結果は、人の運動の特徴付けに不変量が有効であることを示唆し、力学的不変量仮説を支持する新たな知見であるとみなせる。