2014 年 2014 巻 FIN-012 号 p. 14-
株式市場において,注文を公開せずに注文を付き合わせる,ダーク・プールという取引市場が普及してきている.ダー ク・プールは市場の安定化につながると言われている一方,市場の価格発見機能が低下し,市場が不安定になる恐れが あるという批判もある.本研究では1つのリット市場(注文情報が公開されている通常の市場)と1つのダーク・プー ルが存在する人工市場モデル(マルチ・エージェント・シミュレーション)を構築し,ダーク・プールの普及が市場を安 定化させるのかどうかシミュレーションを行い分析をした.その結果,ダーク・プールの普及によりボラティリティが 低下し市場が安定化することが分かった.また,アルゴリズム・トレードでは,ダーク・プールへの発注を増やすほど マーケット・インパクトをおさえることが分かった.しかし,他の投資家がダーク・プールをとても多く使用している状 況だと,アルゴリズム・トレードはそれ以上にダーク・プールを使用しないとマーケット・インパクトを押さえられない ことが分かった.さらに,リット市場のティックサイズが大きいときはよりダーク・プールの有用性が高い可能性を示せ た.普及しすぎた場合にはさまざまな悪影響が示唆されたが,その悪影響がではじめる普及率は実際の金融市場での現 在のダーク・プールの普及率よりかなり高い可能性があることが示唆された.