2016 年 2016 巻 BI-005 号 p. 07-
エージェントベース・モデリングでは,マクロレベルの動学を記述する数理モデルをミクロレベルから説明するエージェントベースのモデルへと展開するが,この際エージェントの意思決定モデルを定める必要がある.多くの場合,ある種の最適化原理や満足化原理,あるいは消費者行動論のような当該ドメインにおける有力理論を基に意思決定の数理モデルが構築されているが,特に個別組織・社会を対象とするときには,通常これらの理論では捨象されているローカルな文化や価値観などを考慮したモデルとする必要性が存在しうる.本稿では,エージェントベース・モデリングにおける意思決定モデルの定式化に際して,質的研究法を活用することに関して考察する.