2020 年 2020 巻 FIN-025 号 p. 09-
景気の先行きを考える上で,製造業の生産活動の活況度合いをいち早く把握することは重要である.本研究では,日本における製造業の主要業種である自動車工業の生産量のナウキャスティング手法を提案する.具体的には,携帯電話端末の位置情報(GPS 情報)を用いることで,大手自動車メーカーの工場の敷地内に滞在している人数を時間帯ごとに計測し,そこから得られる情報を基に,自動車工業の生産状況を推計するモデルの構築を行った.これにより,高い速報性を保ちつつ,大手自動車各社の生産量の概ねの推計に成功した.更に本研究では,同情報が示すメーカーごとの生産状況の趨勢に基づく株式投資戦略を構築することで,堅調なパフォーマンスを確認した.このことは,株式市場予測における,携帯電話の位置情報に基づく生産量把握の有効性を示す結果と言えよう.