2021 年 2021 巻 FIN-026 号 p. 32-
ベンチマークのないバランス型運用では,しばしば自身と類似した運用を行うプレイヤーとのパフォーマンス比較が重視されるため,他のプレイヤーのポジションを把握することが相対的な運用リスク管理の観点から有用である.しかし多くのヘッジファンド複製に関する先行研究で示されるように,運用の自由度の高いポートフォリオのポジションを高精度に推定することは容易ではない.そこで本研究ではヘッジファンドより投資制約の強いバランス型投資信託をケーススタディとして,高精度なウェイト推定を実現する手法を提案し,人工データ実験によりその有効性を示す.具体的には,一般的なショート・レバレッジ制約付きの投資信託のウェイト変動が時価変動要因とリバランス要因から構成されることを,状態空間モデルを用いて明示的に組み込むことにより,ウェイトひいてはリバランスまで高精度に推定できることを明らかにする.