2022 年 2022 巻 FIN-028 号 p. 60-
近年,機械学習の金融分野における活用が注目されており,関連する研究が多くなされている.一方,機械学習の不安定性,とりわけ乱数による影響に関する懸念も,金融以外の分野では指摘されている.上記状況を踏まえ,本研究では,株式リターン予測に機械学習を用いた場合,どの程度乱数の影響を受けるのか調べた.その結果,乱数を変えるだけで大きく運用シミュレーションのパフォーマンス(シャープレシオ) が変わり,全く異なる結果となることが分かった.すなわち,単純に機械学習を用いることは非常に危険であり,予測への機械学習活用には注意が必要であることが示唆される.一方で,方向適合率は比較的乱数の影響が小さく,すべての性質に対して乱数依存性が大きいわけではないことも分かった.このような比較的安定的な性質をうまく活用した,より安定性のある結果を得る方法の模索や,不安定であっても全体的に高いパフォーマンスを常に示すようなより予測力の高いファクターを見つけることが,株式リターン予測に対する機械学習活用への足掛かりとなるのではないかと考えられる.