2023 年 2023 巻 SWO-059 号 p. 04-
雑談対話システムにおける課題として,対話の文脈とユーザ嗜好の理解が挙げられる.雑談対話システムがユーザとの対話の文脈を考慮せずに,直前のユーザ発話に適した応答のみを行う場合,不自然な対話になることがある.また,ユーザ嗜好を考慮せずに雑談対話システムが応答する場合,ユーザが興味のない話題をシステムがユーザに提示し,対話の継続が困難になることがある.これらの課題を解決するために,ユーザ発話におけるテキストや音声データを用いて,感情極性分析やシステム発話に対するユーザの興味有無の判定を行い,ユーザ嗜好を考慮して雑談可能な対話システムが提案されている.しかし,既存研究では,対話における文脈やユーザ嗜好の知識表現方法が確立していないという課題がある.既存研究は,独自形式で対話の文脈やユーザ嗜好を表現しているため,雑談対話システム間で対話の文脈やユーザ嗜好をソフトウェア可読な形式で共有し,再利用することが困難である.近年,文脈や時空間的な変化を表現するイベント知識グラフが注目を集めており,対話における文脈もイベント知識グラフにより表現できる可能性がある.以上より,本研究では,対話の文脈やユーザ嗜好を表現可能な対話イベントオントロジーおよび対話イベント知識グラフを提案する.ソーシャルロボットFurhatをユーザインタフェースとして,提案する対話イベント知識グラフに基づく雑談音声対話システムを実装した.評価実験より,実装した雑談音声対話システムが対話イベント知識グラフに基づいて,ユーザの興味有無に関する知識を獲得し,それに基づいて応答できることを示した.