人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
市場急落時におけるレバレッジドETFと先物市場の相互作用 -人工市場を用いた分析-
水田 孝信八木 勲
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2024 年 2024 巻 FIN-033 号 p. 12-19

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抄録

個人投資家を中心にレバレッジドETFへの投資が増えている.レバレッジドETFとは日経平均株価などの指数の何倍かの価格変動をする上場投資信託である.レバレッジドETFは上場しており,先物とは別に取引されているが,レバレッジドETFの下落が先物市場にどのような影響を与えるかなどは分かっていない.そこで本研究ではレバレッジドETF自身が取引される取引所と誤発注が実装された人工市場を構築し,レバレッジドETFと先物の市場のどちらかで急落が起きたときに,他方の市場にどのような影響を与えるか調べた.その結果,レバレッジドETFに誤発注があった場合,裁定取引のおかげでレバレッジドETFは先物の流動性を使うことができ,下落幅が縮小した.先物に誤発注があった場合も裁定取引のおかげで先物はレバレッジドETFの流動性を使うことができ,下落幅が縮小したが,縮小幅はレバレッジドETFに誤発注があった場合より小さい.先物から見ると少ない流動性のレバレッジドETFからもらえる流動性は比較的少ないからである.レバレッジドETFを取引している投資家からみると,先物の高い流動性の恩恵は大きいが,先物を取引している投資家からすると,レバレッジドETFの流動性から受けられる恩恵は大きくないことが分かった.一方で,レバレッジドETFのリバランス取引により下落幅が大きくなることも分かった.リバランス時にボラティリティより大きいマーケットインパクトを与えると,そのインパクトによる価格変動で追加のリバランスが必要となり,そのリバランスがまた次のリバランスを必要としループが止まらなくなることを示した先行研究と整合的である.

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© 2024 著作者
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