2024 年 2024 巻 FIN-033 号 p. 53-60
本研究は、複雑な会計基準に対する質問応答タスクに対応するための手法を提案する。会計基準は多くの条文と参照関係を含み、その複雑さゆえに会計専門家以外には理解が困難であるという問題がある。また、従来の質問応答モデルでは、会計基準の複雑な参照関係を十分に考慮することが難しく、そのため正確な回答を生成することが困難であった。そこで本研究では、会計基準の参照関係を効果的に活用し、質問応答モデルの性能を向上させる。具体的には、会計基準の参照関係をグラフ化し、質問応答モデルに組み込む手法を提案する。収益認識に関する会計基準を使用しグラフを構築し、会計基準の設例や公認会計士試験の論文式問題を対象に提案手法を事前学習モデルやRAGモデルとの比較実験を行った。結果、会計基準グラフの利用が専門的な質問応答タスクでの性能向上に効果的であることを示した。このアプローチは、他の複雑な法規や規制にも適用可能である。