人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
LLMを用いた情報系企業のESG評価についての一考察
島津 雛子濱崎 良介大塚 浩飯島 泰裕
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2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 122-126

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抄録

企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みはますます重要視されている。特に欧州では、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が適用され、欧州で事業展開をする日本企業にとっても無視できなくなっている。企業の財務情報と非財務情報をまとめて報告する統合報告書が普及し、中でもトップメッセージ(CEOからのコメント)が報告書全体のサマリーであることが期待され、投資家たちの関心を集めている。しかし、トップメッセージを定量的に分析する方法は無い。そこでLLMの中でも取り扱いやすいChatGPTを用いて定量的に評価する方法を検討した。具体的には、ChatGPTの機能「マイGPT」を用いて、ChatGPTにESGと企業情報を知識として与え、分析対象企業のESG情報を抽出・分類した。分類はE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)、O(その他)、の4つのカテゴリーで行い、企業のESGの言及の傾向を評価した。結果、ESGOの4つのカテゴリーへの分類精度は高く、ChatGPTのESG評価が有効であることを示唆した。また分析した企業はS(社会)への言及がESGの中で最も多く、人的資本経営についての変革や施策結果に関する記述が顕著であった。これは当該企業が近年のトレンドを積極的に取り入れている企業であると示唆された。本研究は、企業のESG評価の新たな手法を提示し、LLMの実用可能性を示すものである。

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© 2025 著作者
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