株式市場は時に予測困難な大幅下落を経験する. 近年では, 2008年のリーマンショック, 2020年のコロナショック, 2024年の植田ショックが代表例である. 暴落時の株価予測は, 投資家がリスクとリターンを管理する上で重要な課題である. 提案手法では, 大規模言語モデルに基づいたwebサービスであるChatGPTを用いて, 株価を予測する試みにおいて, 時系列モデル(ガウス過程回帰)で株価の時系列データを予測する際に, ガウス過程回帰のガウスカーネルのパラメータの設定に, ベイズ推定を用いる. ベイズ推定では, 事前分布に基づいて事後分布を作成することで, 推定に常識や信念を取り入れることのできる推定手法である. 本研究では, ガウス過程回帰のガウスカーネルのパラメータの設定にベイズ推定を用い, その際の事前分布の作成にChatGPTを用いることで, 大規模なインターネット上の知見を踏まえた事後分布を作成し, 市場の混乱時, 特に株価暴落局面で, 株価を予測することを目指すとともに, ChatGPTを用いたデータ分析の新たな手法の枠組みを提案する. 大規模なインターネット上の知見を踏まえた事後分布を作成するために, ChatGPTへの入力プロンプトを工夫し, 事前分布を提案させる. 具体的には, 金融機関が発行するマーケットレポートの内容を使用して, 現在や過去の市場環境などをテキストとして与える.植田ショック時の日経平均株価を対象に株価予測精度の検証を行い有効性を確認したところ, 事前分布に一様分布を用いた場合よりも高い精度で株価を予測できることが示された. これらの結果は, ChatGPTと時系列データ分析の手法を統合した, 新しいデータ分析手法としての応用可能性を示唆するものであり, 投資判断にChatGPTを用いる手法として期待できる.
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