人工知能学会第二種研究会資料
Online ISSN : 2436-5556
2025 巻, FIN-034 号
第34回金融情報学研究会
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
  • 木村 泰知, 佐藤 栄作, 門脇 一真, 乙武 北斗
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 01-05
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    我々は,人工知能学会金融情報学研究会(SIG-FIN)の協力の下,2024年10月のSIG-FIN第33回研究会においてUFO-2024タスクおよびコンペティションを提案し,2024年11月1日から12月28日までの約二ヶ月間にわたりコンペティションを実施した.UFO-2024では,TOPIX500に含まれる494企業の1年間の有価証券報告書の表を対象とし,表検索(Table Retrieval)タスクと表質問応答(Table QA)タスクの2つの課題を実施した.参加者はこれらのタスクに対応するシステムを構築し,リーダーボードに出力ファイルを提出してその性能を競い合った.Table Retrievalタスクには5チームが参加し13システムを,Table QAタスクには5チームが参加し21システムを提出した.本稿では,本コンペティションのタスク概要と結果を報告する.

  • 髙砂 爽, 秋葉 友良
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 06-12
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究ではTableQAを実現するため,与えられた表を見出し行(列) 部分とデータセル部分を分割し,文章化することで抽出を行った.文章化した表から情報を検索することで抽出を可能とした.

  • 司 龍, 張 引, 王 小天, 宇津呂 武仁
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 13-19
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本論文の目的は,有価証券報告書(以下:有報)の表から情報を抽出するタスク(SIG-FIN UFO2024Task)に参加するためのシステムの構築である.SIG-FIN UFO2024タスクは,表検索および表質問応答の二つのサブタスクで構成されているが,本研究では特に表質問応答サブタスクに焦点を当て,近年様々な自然言語処理タスクにおいて顕著な成果を示している大規模言語モデル(Large Language Model、以下:LLM)の適用可能性について検討する.本研究を通じて,LLMの特性を活かした高精度な情報抽出手法の確立を目指す.

  • 藤田 優希, 水島 陵太, 乙武 北斗, 吉村 賢治
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 20-25
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本論文ではUFO-2024タスクにおけるFUSINTチームの提案手法と結果について述べる。TableRetrievalタスクでは、有価証券報告書内の特定の表を質問文から検索する手法として、コサイン類似度とリランクを利用した絞り込みと、二値分類モデルによる手法を提案する。約83%の精度を得たが、前処理やセクション予測モデルの汎用化が今後の課題であり、多様な質問形式に対応可能な手法の検討が求められる。TableQAタスクでは、有価証券報告書の表のセルを特定する手法として、表の構造と値の表記揺れの統一に焦点を当てた方法を提案する。本手法の利点として、根拠を可視化できる点が挙げられる。表の行列を分割することで、階層構造を持つ表への対応に課題は残るが、約91%の高い精度でセルの位置を特定することができた。

  • Bekki Tomoya
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 26-28
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    有価証券報告書の目次から質問に対する回答を含む目次を抽出する手法を提案する。具体的には、学習データを用いて目次データベースを構築し、各評価データについてどの目次に類似の質問が含まれているかを識別する。これにより、局所的な部分をLLMやキーワードを用いて、効率的に探索することが可能になる。本手法により、UFO2024コンペティションTRタスクで1位を獲得した。

  • 田中 麻由梨, 土井 惟成
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 29-33
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    This paper proposes a table retrieval method based on similarity and a one-shot question-answering (QA) method using a large language model for the massive volume of tabular data found in securities reports. In the table retrieval task, we first utilize distributed representations obtained from a pre-trained model to retrieve question texts similar to the query. Then, we compute their similarity to associated tabular data, identifying the table with the highest similarity. In the table QA task, we achieve one-shot prompting by providing the retrieved similar question text and its corresponding tabular data as a sample to the large language model. This method aims to enable flexible QA in the financial domain, where various tables may be contained.

  • 遠藤 修斗, 水田 孝信, 八木 勲
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 34-41
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    ETFは資金は小額だがいろんな資産に分散投資したい個人投資家にとって有効な投資手段となっている.しかし,金融市場では裁定取引によってETFを含む複数の市場にショックが伝搬すると言われている.そのため金融当局や証券取引所は市場安定化のため,値幅制限やサーキット・ブレイカーなどの規制を設けることがあるが,市場によって導入されている規制はまちまちである.そこで本研究では人工市場を用いてETFとそれを構成する原資産市場を構築し,ショックが発生したときの下落要因と規制の有無によってそれがどのように伝搬するか調査した.その結果,裁定取引によって他の市場へショックが伝搬することが確認できたが,ETF市場の価格下落時は原資産市場に規制がない方が下落が抑えられるということがわかった.

  • 平野 正徳
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 42-47
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    大規模言語モデル(LLM)の台頭により、人間の様々なタスクの自動化が可能になり始めている。そこで、本研究では、LLMをエージェントとして用いた人工市場シミュレーションを構築することで、現実に近い人工市場を構築することを目指す。市場状況をLLMにテキスト形式で入力し、適切な注文を出力させ、その注文を人工市場に渡すという形式をとることでLLMをベースとしたエージェントの構築を行った。実験の結果、実際の市場を模した人工市場を構築するためには、このLLMに入力するプロンプトが重要であることが明らかになった。

  • 中川 慧, 土屋 平
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 48-55
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究では、実務的にも学術的にも重要な問題であるポートフォリオ最適化を考える。従来のポートフォリオ構築手法である平均分散法やリスクベースのポートフォリオには、次の課題が存在する。平均分散法は、特定の銘柄に過度に集中してしまう問題があり、十分な銘柄分散が行われない場合がある。また、リスクベースのポートフォリオ構築手法は、期待リターンを考慮しないため、ポートフォリオ全体の効率性が低下する可能性がある。そこで、本研究ではこれらの課題を解決するために、リスクベースのポートフォリオである最小分散ポートフォリオに重み付きTsallisエントロピーを正則化項として導入した新たなポートフォリオ構築手法を提案する。Tsallisエントロピーは、Shannonエントロピーの一般化された形式であり、これを修正することで、ポートフォリオのリスク、リターンおよび銘柄の分散度を考慮した資産配分が可能となる。また、理論的には、提案手法は凸最適化問題として定式化され、目的関数が強凸性を満たすため扱いやすい。さらに、提案手法は、Tsallisエントロピーのパラメータを調整することで、等ウェイトや最小分散、リスクパリティ・ポートフォリオといったポートフォリオを復元できるため、これらのポートフォリオの一般化になっている。さらに、Long-Shortポートフォリオも自然に構築することができる。最後に、実データを用いた実証分析により他のリスクベース・ポートフォリオとパフォーマンスを比較し、提案手法の有効性を確認する。

  • 星野 知也
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 56-62
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究では、推薦システムにおける多様性向上の概念を適用したアセットアロケーション手法を提案する。推薦システムとは、利用者の選好や行動履歴に基づき商品やコンテンツを提示する技術である。利用者の興味に合うアイテムを提示する必要がある反面、類似したアイテムを過剰に含む推薦は満足度を低下させる可能性がある。これに対処するため、利用者の選好への適合と推薦アイテムの多様性のトレードオフを考慮する手法が提案されている。本研究では、行列式点過程や周辺関連性最大化を用いて、投資家の見通しを各資産に対する選好度、資産間の相関をアイテム間の類似度としてモデル化する。集中投資による期待リターンの向上と、分散投資によるリスク低減の両立を図る新たなアセットアロケーション手法を提案する。米国株式市場のデータを用いた実証分析を通じて、提案手法が従来手法と比較して優れたパフォーマンスを示すことを確認した。

  • 水田 孝信
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 63-66
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    近年,AI技術が目覚ましい発展を成し遂げている.金融業界においてもAI技術を応用した技術が多く使われるようになった.特に,ディープラーニングがけん引した第3次AIブーム以降,多くのAI技術が金融業界で応用され,金融業界の発展を語るうえで欠かせない要素となっている.さらに,金融発のAI技術もあり,金融抜きでAIの発展も語りつくせなくなった.このように金融にとってもAIにとっても,発展の歴史を語るうえで,お互い欠かせない要素となっている.そして一般に,現在の技術を知るうえでその歴史を知ることが重要であることは言うまでもない.そこで本発表では,本会,人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)の歴史を,AIと金融の技術史の一部として議論しながら振り返る.我が国において本会は,AIと金融の技術の発展の大きな部分に寄与してきた.我が国におけるAIと金融の技術史を議論するうえで欠かせない部分であることは間違いなく,その歴史を振り返ることは有意義である.

  • Takashima Kosei, Yagi Isao
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 67-74
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    ベーシックインカムは近年着目されている社会福祉政策のアイデアである.しかし,ベーシックインカムを実施するためには社会経済システムの大幅な変革が必要になり,その影響を予測することは困難である.そのため,理論的な研究は進まず,実証実験に基づく研究が主体となっているといえる.こうした不確実性を解消するため,本研究では相対的な所得に基づく効用を組み込んだ複層的なフィードバック構造を持つマクロ経済モデルを構築した.このモデルを用いて,ベーシックインカムの効果が経済状況によってどのように変化するかという,これまで着目されてこなかった分析を試みた.その結果,社会を構成する労働者の労働意欲次第で,成長期の経済が停滞することもあれば,低迷する経済が活性化する可能性もあり,BIの導入による影響は条件付きあることが明らかになった.

  • 安田 卓矢, 村山 友理, 和泉 潔
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 75-78
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    Fermi estimation is a widely used technique in business analytics and market research for deriving approximate answers to complex problems where concrete data is insufficient. Business analysts employ this method to estimate market sizes and sales figures, which are critical inputs for drafting budgets and sales plans. This process requires advanced domain knowledge, logical reasoning, and precise formulation of estimation equations. In this research, we explore the integration of large language models (LLMs) to enhance the accuracy of Fermi estimation problems by leveraging causal structural reasoning. By constructing an estimation plan rooted in causal structure estimation, LLMs are used to systematically identify and utilize the relationships underlying the target event. Given the inherent challenge of obtaining precise ground truth data for such tasks, we propose an evaluation framework that leverages the ensemble consensus of multiple LLMs to assess the quality of Fermi estimations. Our findings demonstrate the potential of LLMs to improve the rigor and reliability of economic Fermi problem-solving, advancing their practical applications in business analytics.

  • 丸山 博之
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 79-81
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    The Tokyo Stock Exchange reorganized its market in 2022. Previously, the market was divided into the following sections: TSE 1st Section, TSE 2nd Section, Mothers, and JASDAQ (Standard and Growth). It was then reorganized into three sections: Prime Market, Standard Market, and Growth Market. In this study, we conducted an analysis using a threshold autoregression model to investigate the impact of the market reorganization

  • 中田 喜之, 吉野 貴晶, 杉江 利章, 関口 海良, 劉 乃嘉, 大澤 幸生
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 82-89
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    資産の関係性は市場環境によって変化する。例えば、2010 年代は株価と債券価格は逆相関の関係性にあったが、2021 年ごろからインフレによる金融政策の引き締めの影響で順相関に変わった。資産運用では、リターンの関係性を基に資産の配分を行うため、関係性の変化を早期に検知することが重要である。本研究では、資産の関係性に影響を与えるイベントの早期検知の手法を提案する。資産に強い影響を持つイベントが発生すると、資産価格に不連続なジャンプが発生することがある。このため、資産価格のジャンプを検出して、同時に発生したジャンプが同じ方向の資産を連結したグラフを作成し分析する。グラフが既存の関係性の領域を跨ぐ場合は既存の関係性と異なる反応であるため、資産の関係性への影響が懸念されるイベントと判定できる。ジャンプの検定にはLee and Mykland の手法を用いて、グラフの分析はGraph-BasedEntropy と領域間相互作用を用いて、影響が大きいイベントの検知を試みた。日米欧の金融データを用いて実証実験を行い、イベント検知後に資産関係が変化する傾向がみられた。

  • 森田 梨加, 町田 奈津美, 山本 康介, 中川 慧, 星野 崇宏
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 90-97
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    This study examines the diversification effects of incorporating an "art" asset class into investment portfolios. While numerous studies have examined the inclusion of art assets in portfolios, few have addressed the unique characteristics of these assets, such as their asymmetry, long-term dependencies, and dynamic correlations with other asset classes.Therefore, in this study, we employ a multivariate GARCH model to dynamically capture the correlations between art assets and traditional financial assets, focusing on conditional cross-effects and the volatility spillovers. We also evaluate the extent to which art assets contribute to portfolio diversification, taking into account their liquidity. Furthermore, we calculate the hedge ratios and optimal weights for art assets, offering insights into their strategic significance in investment portfolios.

  • Takano Kaito
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 98-108
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    センチメント分析における機械学習モデルの多くは,ポジティブまたはネガティブのカテゴリに分類するタスクとして設計されている.しかし,これらのモデルが出力する値は分類に対する自信を示すものであり,センチメントの強弱を直接反映するものではない.センチメントは本来連続的な値で表されるべきであるが,その主観性から一貫したラベリングが困難であるため,多くの研究では順序関係を持つ離散的なラベルを用いた分類タスクとして処理されている.本研究では,金融テキストにおけるセンチメント分析のため,連続値を出力可能なモデルを開発,評価するために使用可能なデータの生成方法を検討する.具体的には,景気ウォッチャーのコメントを使用してデータを作成し,その傾向の分析を行う.

  • 鈴木 雅弘, 坂地 泰紀
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 109-115
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,内閣府が実施する景気ウォッチャー調査のテキストデータに着目し,大規模なデータセットを構築するとともに,このデータセットを基に物価センチメント指数(PSI)を算出する.景気ウォッチャー調査は,全国の経済動向に敏感な人々へのアンケート調査であり,景気に対する現状認識や先行きの見通し,その根拠となる具体的なコメントなどが含まれている.これまで,景気ウォッチャー調査は主にDiffusion Index (DI) などの指標の算出に利用されてきたが,データ収集や抽出が容易ではなかったことから,テキスト情報の活用は十分に進んでいるとは言い難い.本研究では2024年5月時点までのデータで,テキスト情報を含む約30万件の現状判断データと約30万件の先行き判断データから,利用しやすい形式のデータセットを構築する.これらのデータを用い,関連分野分類,センチメント分類,判断理由分類の3つの文分類タスクを定義し,いくつかの言語モデルで評価実験を行う.毎月公開される調査結果を自動でデータセットに統合し,常に最新のデータセットが利用できるようなフレームワークを構築した.さらに,当該データセットに含まれるコメントの分野や回答者の業種などの情報によって区分したコメントを,大規模言語モデル(LLM)を用いて価格動向を分類することで,詳細に区分したPSIを構築する.我々が構築した消費者向けPSIは,既存の消費者物価指数に対して先行研究より高い相関を示した.

  • 竹下 蒼空, 酒井 浩之
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 116-121
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本稿では、決算短信に記載される業績要因に基づき、業種ごとに年間レポートを作成することを試みた。決算短信から様々な業種の業績に関する年間レポートを作成するには、一つの企業で複数の業種の事業を行っている場合もあるため、ある企業の決算短信をそのまま一つの業種の業績要因に関する文の集合とみなすことはできない点や、決算短信は量が膨大であるために、人手で業種ごとに業績要因に関する文を収集するのは困難な点などの問題点を考慮しなければならない。そこで本研究では、決算短信に含まれる業績の要因が記載されている文を業種ごとに分類することで、年別かつ業種別のレポートを自動的に生成した。2022年の年間レポートでは最終的に435業種のレポートをChatGPT-4oにより自動生成した。その結果、業績要因を示す文をベクトル化し、類似度を用いて業種別に推定する方法は業種別のレポート生成に有効であることを確認した。また、生成したレポートはその業種をもつ企業について言及し、業種全体の流れを示した。

  • 島津 雛子, 濱崎 良介, 大塚 浩, 飯島 泰裕
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 122-126
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    企業のESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みはますます重要視されている。特に欧州では、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が適用され、欧州で事業展開をする日本企業にとっても無視できなくなっている。企業の財務情報と非財務情報をまとめて報告する統合報告書が普及し、中でもトップメッセージ(CEOからのコメント)が報告書全体のサマリーであることが期待され、投資家たちの関心を集めている。しかし、トップメッセージを定量的に分析する方法は無い。そこでLLMの中でも取り扱いやすいChatGPTを用いて定量的に評価する方法を検討した。具体的には、ChatGPTの機能「マイGPT」を用いて、ChatGPTにESGと企業情報を知識として与え、分析対象企業のESG情報を抽出・分類した。分類はE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)、O(その他)、の4つのカテゴリーで行い、企業のESGの言及の傾向を評価した。結果、ESGOの4つのカテゴリーへの分類精度は高く、ChatGPTのESG評価が有効であることを示唆した。また分析した企業はS(社会)への言及がESGの中で最も多く、人的資本経営についての変革や施策結果に関する記述が顕著であった。これは当該企業が近年のトレンドを積極的に取り入れている企業であると示唆された。本研究は、企業のESG評価の新たな手法を提示し、LLMの実用可能性を示すものである。

  • 高橋 明久, 戸辺 義人
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 127-131
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では、金融商品取引法に基づいて提出される大量保有報告書における担保契約等重要な契約に関する情報の抽出・構造化手法を提案する。大量保有報告書では保有株券等に関する貸借契約、担保契約、売戻し契約、売り予約その他の重要な契約又は取決めについて記載することが株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令(通称5%ルール)により義務付けられている。該当情報は自然言語の形式で提出されることから、データの収集・分析を行う過程で多くの時間が必要となる。そこで、本研究では大量保有報告書に記載される担保契約等重要な契約を種類ごとに抽出・構造化することを目的とする。具体的には、EDINETを用いて取得した大量保有報告書より抽出した契約に関する文章をBERT/大規模言語モデル(LLM)の2種類を用いて構造化を行い、その精度を評価する。

  • Yano Kazuki, Hirano Masanori, Imajo Kentaro
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 132-137
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    金融ドメインにおける大規模言語モデル(LLM)の実用化には,専門的な金融知識の不足という課題が存在する. 特に,日本の金融市場に特有の知識である業種区分に関して、既存のLLMの多くは限定的な推論能力しか示していない. 本研究では,LLMにおける業種区分の知識抽出能力を向上させるため,質問応答形式のテンプレートを用い,ルールベースおよびLLMベースで生成したデータセットで微調整を行う手法を提案する. 実験結果から,LLMベースの合成データの使用およびテンプレートの多様化が,モデルの業種区分に関する知識抽出能力を有意に向上させることを確認した.さらに,合成データのパープレキシティと業種区分の正答率との間に相関があることを示す.

  • 屋嘉比 潔, 中川 慧
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 138-144
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究は、財務指標および株価情報を活用した機械学習による企業の業種分類を提案し、その効果を従来の分類手法と比較する。ファイナンスおよび会計分野において業種分類は、期待外株式リターンや財務指標の分析において重要な役割を果たす。しかし、事業の多角化やM&Aの進展に伴い、日経産業分類、東証33業種分類、GICS分類などの従来の業種分類コードの正確性に対する懸念が高まっている。本研究では、Geertsema and Lu (2023) が提案した勾配ブースティングマシン(GBM)を用いた分類手法を導入し、従来の業種分類コードと比較した。具体的には、GBMを用いて財務データや株価情報に基づき企業グループの同質性を評価し、分類のパフォーマンスを検証した。そして財務指標および株価情報を用いて企業グループの同質性を評価し、これらの従来の枠組みに対するGBMに基づく分類のパフォーマンスを評価する。さらに、GBMを用いた業種分類を用いて、投資戦略のパフォーマンスを検証した。本研究による機械学習による業種分類が、従来の分類手法を補完し、企業グループの同質性の評価や産業分類の信頼性向上が期待される。

  • 小田 直輝, 中川 慧, 星野 崇宏
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 145-151
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究では、株式市場における機械学習を用いたクロスセクション予測の精度を向上させるため、株価リターンシグナルと業績シグナルの有効性を比較分析した。株価リターンシグナルは、将来の株価リターンの相対順位をラベルとするもので、一方で業績シグナルは、企業業績(およびその成長率)の相対順位をラベルとするものである。本研究では、これらのシグナルを個別および組み合わせた形で使用し、さまざまなディスクリプターを特徴量に機械学習モデルを適用してクロスセクション予測に基づいて分位ポートフォリオを構築した。その結果、株価シグナルは業績シグナルよりも有効である一方、業績シグナルは決算時に効果的であることが確認された。また、決算期にこれらを統合することで予測精度がさらに向上することが明らかとなった。

  • Kubo Kenji, Nakagawa Kei
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 152-158
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    本研究では、取引コストを考慮しながら動的なポートフォリオ最適化を行うために、Multi-step CARA型損失関数(MS-CARA Loss)を提案する。MS-CARA Lossでは、リバランスによる取引コストをペナルティとして組み込みつつ、局所的および大域的なリターンを同時に考慮することで、実運用に近い条件下でのポートフォリオ最適化を行えることを示す。また、MASTER\cite{li2024master}を参考にした時間方向と銘柄方向に対するDual Attention機構を導入し、市場データに含まれる時系列とクロスセクションの依存関係を包括的に捉えるよう設計した。S\&P 500の構成銘柄を用いた実証分析では、提案手法が取引コストを考慮した場合でも良好なパフォーマンスを示し、全結合ニューラルネットワークを用いたベースラインを一部指標で上回ることを確認した。これらの結果は、コスト込みでの運用を想定した深層学習によるポートフォリオ最適化に有用である可能性を示唆している。

  • 吉田 凌也, 平野 正徳, 今城 健太郎
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 159-166
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    ボラティリティは資産のリスクを定量化し、投資戦略の最適化を行うために重要である。実現ボラティリティやGARCHモデルなど、様々な推定手法が提案されているが、正確に推定するのは難しい。本研究では新たなボラティリティ推定手法として、条件付き拡散モデルで金融時系列を生成し、同時にそのボラティリティも出力するアーキテクチャを提案した。シミュレーションにより得られた金融時系列を用いて実験を行い、提案手法が金融時系列とみなせるデータを生成でき、同時に推定したボラティリティが実現ボラティリティと相関を持つことを示した。

  • 石井 成來, 堀田 大貴
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 167-173
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    株式市場は時に予測困難な大幅下落を経験する. 近年では, 2008年のリーマンショック, 2020年のコロナショック, 2024年の植田ショックが代表例である. 暴落時の株価予測は, 投資家がリスクとリターンを管理する上で重要な課題である. 提案手法では, 大規模言語モデルに基づいたwebサービスであるChatGPTを用いて, 株価を予測する試みにおいて, 時系列モデル(ガウス過程回帰)で株価の時系列データを予測する際に, ガウス過程回帰のガウスカーネルのパラメータの設定に, ベイズ推定を用いる. ベイズ推定では, 事前分布に基づいて事後分布を作成することで, 推定に常識や信念を取り入れることのできる推定手法である. 本研究では, ガウス過程回帰のガウスカーネルのパラメータの設定にベイズ推定を用い, その際の事前分布の作成にChatGPTを用いることで, 大規模なインターネット上の知見を踏まえた事後分布を作成し, 市場の混乱時, 特に株価暴落局面で, 株価を予測することを目指すとともに, ChatGPTを用いたデータ分析の新たな手法の枠組みを提案する. 大規模なインターネット上の知見を踏まえた事後分布を作成するために, ChatGPTへの入力プロンプトを工夫し, 事前分布を提案させる. 具体的には, 金融機関が発行するマーケットレポートの内容を使用して, 現在や過去の市場環境などをテキストとして与える.植田ショック時の日経平均株価を対象に株価予測精度の検証を行い有効性を確認したところ, 事前分布に一様分布を用いた場合よりも高い精度で株価を予測できることが示された. これらの結果は, ChatGPTと時系列データ分析の手法を統合した, 新しいデータ分析手法としての応用可能性を示唆するものであり, 投資判断にChatGPTを用いる手法として期待できる.

  • 高橋 友則, 水野 貴之
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 174-176
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
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    金融市場におけるトレーダーの売買活動は、注文板(Limit Order Book)と呼ばれる場に集約され、注文間の付け合わせを通じて売り手と買い手の相互作用が行われる。注文板のモデル化は、アルゴリズム取引戦略の構築などの実用的なニーズから重要性を増しており、近年では高頻度取引データを用いた生成モデルが従来のバックテストに代わるシミュレーション手法として注目されている。本研究では、市場参加者の注文情報系列をユニークなトークン系列へ変換し、Transformerモデルの一種であるGPTアーキテクチャと、状態空間モデルの一種であるMAMBAアーキテクチャをスクラッチから学習させた。これらのモデルが合成注文情報を生成可能であることを示す。

  • 原口 健太郎, 丹波 靖博, 池田 大輔, 阿部 修司, 大石 桂一
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 177-184
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本報告は,機械学習を用いて帰納的に構築したモデルとSHapley Additive exPlanations(SHAP)を組み合わせてシミュレーションを実現する枠組みを提案し,地方公共団体の開示情報が地方債金利に与える影響を非線形的に解析する。債券市場における会計情報と金利のふるまいはファイナンスや会計学における重要な興味の対象である。先行研究では,OLSにてコントロール変数を固定したうえで説明変数を変動させた際の目的変数の変動を測定する手法や,機械学習モデルを構築して金利の構成要素を解釈する手法が用いられてきた。しかしながら,OLSは非線形の関連性の捕捉が困難である。一方で,機械学習モデルでは,OLSのようにコントロール変数を固定することができない。これらの点が研究手法上の大きな課題となっていた。 そこで,本報告では実データを用いて訓練した機械学習モデルに,コントロール変数を固定化した仮想データを入力することでシミュレーションを行い,そのふるまいをSHAPにて解釈・可視化する手法を提案する。つまり,本報告は,自然法則や仮説を定式化して演繹的にモデルを構築するシミュレーションとは異なり,実データからの回帰に基づき帰納的に構築したモデルと実データ由来の仮想データを用いてシミュレーションを実現するものである。この枠組みを用いて,コントロール変数の固定化をはじめとした様々な条件を指定したうえでの非線形の関係性を捉えることが可能となる。本報告では,ケーススタディとしてわが国の地方債市場を対象に分析を行う。その理由は,わが国の地方債場の規模は世界的にみてもかなり巨大であるにもかかわらず,研究蓄積は著しく少ないからである。分析の結果,わが国の地方公共団体は破産可能性がないにもかかわらず,地方債金利は会計情報と強い関連性を有し,その関連性は顕著に非線形的であることを明らかにする。そのうえで,機械学習モデルを用いたシミュレーションが有する豊富な分野横断的な展開可能性や投資戦略への応用可能性も併せて論じる。

  • 水門 善之, 米田 亮介
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 185-188
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では,機械学習手法の一種であるKAN(コルモゴロフ-アーノルド・ネットワーク)を,自己符号化器(オートエンコーダ)として用いる手法を提案する.更に,同手法を用いることで,日本国債のイールドカーブの3ファクターモデルの構築を行った.その際,KANの中間層に着目することで,自動生成した3つのファクター(中間層のノード)が,それぞれイールドカーブの水準・傾き・曲率を表現していることを示した.加えて本研究では,構築したKANベースの自己符号化器を構成する近似関数の形状に着目することで,イールドカーブの形状と3ファクターの統計的な関係性を確認した.

  • Ohori Ryosuke
    原稿種別: 研究会資料
    2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 189-194
    発行日: 2025/02/23
    公開日: 2025/02/23
    研究報告書・技術報告書 フリー

    本研究では、企業の有価証券報告書や統合報告書に含まれるESG(環境・社会・ガバナンス)関連情報を体系的に整理するため、Financial Industry Business Ontology(FIBO)を基盤としたオントロジーを構築します。さらに、構築したオントロジーを活用し、生成AIモデルを用いて報告書からESG情報を自動抽出・要約する手法を提案します。これにより、投資家やアナリストが企業のESGリスクや機会を迅速かつ正確に把握できることを目指します。

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