2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 152-158
本研究では、取引コストを考慮しながら動的なポートフォリオ最適化を行うために、Multi-step CARA型損失関数(MS-CARA Loss)を提案する。MS-CARA Lossでは、リバランスによる取引コストをペナルティとして組み込みつつ、局所的および大域的なリターンを同時に考慮することで、実運用に近い条件下でのポートフォリオ最適化を行えることを示す。また、MASTER\cite{li2024master}を参考にした時間方向と銘柄方向に対するDual Attention機構を導入し、市場データに含まれる時系列とクロスセクションの依存関係を包括的に捉えるよう設計した。S\&P 500の構成銘柄を用いた実証分析では、提案手法が取引コストを考慮した場合でも良好なパフォーマンスを示し、全結合ニューラルネットワークを用いたベースラインを一部指標で上回ることを確認した。これらの結果は、コスト込みでの運用を想定した深層学習によるポートフォリオ最適化に有用である可能性を示唆している。