2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 82-89
資産の関係性は市場環境によって変化する。例えば、2010 年代は株価と債券価格は逆相関の関係性にあったが、2021 年ごろからインフレによる金融政策の引き締めの影響で順相関に変わった。資産運用では、リターンの関係性を基に資産の配分を行うため、関係性の変化を早期に検知することが重要である。本研究では、資産の関係性に影響を与えるイベントの早期検知の手法を提案する。資産に強い影響を持つイベントが発生すると、資産価格に不連続なジャンプが発生することがある。このため、資産価格のジャンプを検出して、同時に発生したジャンプが同じ方向の資産を連結したグラフを作成し分析する。グラフが既存の関係性の領域を跨ぐ場合は既存の関係性と異なる反応であるため、資産の関係性への影響が懸念されるイベントと判定できる。ジャンプの検定にはLee and Mykland の手法を用いて、グラフの分析はGraph-BasedEntropy と領域間相互作用を用いて、影響が大きいイベントの検知を試みた。日米欧の金融データを用いて実証実験を行い、イベント検知後に資産関係が変化する傾向がみられた。