会議名: 第106回言語・音声理解と対話処理研究会
回次: 106
開催地: 早稲田大学 早稲田キャンパス8号館B107
開催日: 2026/03/03 - 2026/03/04
p. 99-104
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の社会的コミュニケーションに関わる特性がいかに相互行為に具現化されるかを、ASD者のコミュニケーション検査であるADOS-2の会話分析・マルチモーダル分析を通じて検討した。分析の結果、検査者の課題提示に対する受諾の遅れ、沈黙、フィラーは、教示から遂行開始までに生じたトラブルを示唆するとともに、「どのように(how)振る舞うべきか」という自らの疑問を言語化し相手に提示することの困難さとして顕在化することが明らかとなった。また、検査者による明示的遂行の要請やインクリメントと、それに対する被検査者の応答は、その状況における両者の適合的な振る舞いであり、制度的制約を越えた「間主観的な調整」として機能している。本研究からは、検査者側の視点のみに基づく評価に留まらず、検査中のやりとりにおける調整過程そのものを質的に評価する視点の重要性が示唆される。