抄録
生体内のfibrinogenは, thrombin及び血液凝固因子のFactor XIII (FXIII)の作用でinsoluble fibrinに変化する. 局所的に, insoluble fiiorinの形成を促進させる材料を開発する目的で, 組織吸収性gelatin sponge, 並びに手術用縫合糸を夫々担体として, FXIII及びthrombinを固定化した。
固定化spongeは, その特性を利用して, 肝癌, 進行性乳癌などに対するtranscatheter embolizationの塞栓物質として臨床使用した. いずれの症例も, 目的とした血管の閉塞状態は良好で, その効果も満足できるものであった. 固定化縫合糸については, 局所的fibrin形成能を, in vivoの面から観察した. 即ち, 本材料をラットの腹壁筋層内に埋入し, 一定期間の後に, その抜糸に要する力, “Extraction-force”を測定すると共に, 局所のhydroxyproline量の測定を行った. いずれの結果も, 固定化材料周囲には多量のfibrin形成がおこり, 組織適合性が良好であることが証明された.