抄録
雑種成犬5頭を用い, 急性門脈遮断時の血液凝固線溶系変化について測定し検討した。また親水性ヘパリン化材料(東レ, H-RSD)からバイパス用カテーテルを試作し, 門脈遮断と同時に門脈血をカテーテルを経由して大腿静脈ヘバイパスした犬5頭についても同様の測定を施行し比較検討した。その結果, 急性門脈遮断時には門脈血の急激なうっ血によって内因性ならびに外因性凝固亢進が門脈血中で早期に惹起され, 門脈結紮後10分で門脈血中SDICが発生し, 平均105分で5頭すべて死亡した。一方門脈血をカテーテルを経由して大腿静脈ヘバイパスした犬は4時間後も5頭すべて元気に生存し, 血液凝固線溶学的にも有意な変動を認めなかった。また使用後のカテーテル内面には血栓形成は認められず, 門脈遮断を時間の制限なく安全に施行できる術式が確立された。この術式は肝胆道系手術等, 臨床において幅広くその応用が期待できる。