1983 年 12 巻 1 号 p. 174-178
静脈用E-PTFE人工血管の犬門脈での内膜形成過程について検討した。雑種成犬38頭の門脈をfibril length 4~8μのE-PTFE人工血管で置換した。早期閉塞による死亡2例を除き36頭中29頭の開存を得ており, 開存率81%であった。これ等につき経時的に屠殺し, 光学顕微鏡, 走査電子顕微鏡による検討を行い以下の結論を得た。初期血栓の抑制は新生内膜の肥厚を防ぎ, 内皮細胞の下層となる組織の完成を早め, 内皮化の進行に寄与する。内皮細胞は宿主門脈より吻合部を越え連続性に伸展し, より中央部に達すると細胞同志の連続を保ちながら飛び石状の集塊を形成し, やがて埋めつくされ内皮化が完成する。孤立性に存在する内皮細胞は認められず, 宿主門脈内皮細胞に由来すると考えられた。門脈への移植では, 内膜の栄養は厚さ0.2mm以上の部分では内皮下に発達した栄養血管が必要であり, 0.2mm以下では直接門脈血により栄養されていると考えられた。