人工臓器
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人工血管に対するfibrin coatingの検討
和泉 裕一久保 良彦笹嶋 唯博稲葉 雅史西岡 洋鮫島 夏樹
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1983 年 12 巻 1 号 p. 217-220

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抄録

人工血管が生体に移植された後におこる現象の中で、移植早期に人工血管内面に沈着するfibrinの量及び性状は、その人工血管の開存性と組織治癒に大きく影響する因子の1つとされている。fibrinの親水性、抗凝血性、生体適合性などに着目し、この特性を人工血管の処理に有効に利用する目的で、fibrin生成の至適条件と最も有効なfibrin coatingの方法を検討し、次の結果を得た。1) fibrinの抗凝血性とfibrin clot生成時間を考慮すると、thrombinの至適量はfibrinogen 20mgに対し6~10単位と考えられた。2) fibrinは20~30℃の温度条件下で安定している。3) fibrin生成に抗プラスミン剤の添加は有効であつた。4) fibrinogen溶液を人工血管の内腔から圧をかけて注入すれば内面は密にfibrin netで覆われる。5) fibrin coatingした人工血管の内面は血液適合性に優れていると考えられた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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