抄録
実験的に作製した左室肥大犬を用い、拍動流体外循環の肥大心筋に対する効果を左室心外膜下および心内膜下両筋層のエネルギー代謝産物を経時的に定量することにより評価した。すなわち、左室肥大犬20頭を定常流群および拍動流群、各10頭ずつ2群に分け、電気的心室細動下に常温でポンプ送血量80ml/kg/minとし3時間の完全体外循環(以下ECC)を行った。心筋内ATP含量は、両群ともECC時間が経過するにつれ漸減したが、心内膜下筋層においては拍動流群が定常流群に比較し有意(p<0.01)に高値を示した。また、定常流群では心内膜下筋層において心外膜下筋層と比較し有意(p<0.02)に低値を示した。心筋内乳酸含量は、定常流群が、心内膜下筋層において、拍動流群に比較し有意(p<0.05)に高値を示した。したがって、心筋のエネルギー代謝面からも拍動流は定常流に比較し、肥大心筋の特に心内膜下筋層の安定した血流維持に有効であることが推察された。