大動脈弁置換における, 慢性溶血について検討した. silicon ball弁であるStarr-Edwards弁(モデル1000および1200, サイズ8A・9A)5例, Smeloff-Cutter弁(A4・A5)11例の計16例と, pyrolite carbon tilting disc弁であるLillehei-Kaster弁(16A・18A)15例, Hall-Kaster弁(29A), Björk-Shiley弁(29A), Omniscience弁(27A)各1例の計18例を対比した. これらは術後1年以上を経過し, 臨床的に貧血症状を呈せず, 術後経過の安定している症例を無作為に抽出した. 一般検血, 総ビリルビン, 血清鉄などは正常値を示し, 両群に有意差はなかった. 血清LDHは正常値以上を示し慢性溶血を示していたが, 両群間に有意差はなかった. haptoglobinは全例100mg/dl以下で慢性溶血を示し, silicon ball弁とpyrolite carbon tilting disc弁のt検定では, p<0.05の有意差で, pyrolite carbon tilting disc弁をもちいた群で溶血が少なく, 慢性溶血に対してはより有利であった.
