抄録
完全人工心臓装着ヤギを使用して定量的循環不全を作成し, 循環不全時の動物の代謝動態を解析することによって, 全身循環維持の観点からみた補助心臓の適用及び離脱時期と限界について実験的に検討した。すなわち, 人工心臓装着ヤギを使用して, 一定量の低心拍出量状態に対して補助心臓を適用するまでのプロセスをモデル化した。実験を通じて, 動脈血乳酸値, ピルビン酸値を経時的に測定した。一方, 低心拍出量状態時及び心拍出量改善後の動物の嫌気的代謝の動態を説明する簡単な数理モデルを作成し, それらのモデルを利用して実験時の動物の代謝動態を解析した。その結果, 動脈血乳酸値, ピルビン酸値の経時的推移から低心拍出量状態時の代謝動態を評価する方法は, 補助心臓のみならず, 各種補助循環の適用及び離脱時期や限界を判断するための有用な一つの手段になると考えられた。