抄録
大阪大学第一外科における過去28年の体外循環の研究は, 常温全血体外循環から今日の超低体温希釈体外循環にいたる病態生理の解明であった。常温体外循環における至適灌流量は, 体外循環中の末梢血管抵抗に着目しこれより快定することが出来た。その後, 体外循環中の血流配分の研究を実験的及び臨床的に進め, 特に臨床での上下大静脈還流量比の体表面積別検討を行った。さらに血液希釈の安全限界についても検討し, 常温ではHt20%であることを明らかにした。また体外循環中の内分泌よりみた病態生理の研究も進めることが出来た。最近は超低体温体外循環を用いる機会が多いが, その至適灌流量についても検討し, 20℃超低体温低流量灌流法での動物実験からは, 灌流量は60と30ml/min/kgの間にcritical pointがあることを示した。臨床においては酸素消費の面より超低体温体外循環の至適灌流量の決定を試みている。種々の条件下での体外循環の病態生理とその至適灌流量についての研究の概要を述べた。