人工臓器
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医用材料をヘパリン化する一方法
野一色 泰晴宮田 暉夫伊藤 啓宮本 武明
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1986 年 15 巻 1 号 p. 154-157

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抄録
医用材料をヘパリン化する方法として, 材料に4級化剤を直接結合させ, 次いでヘパリンをイオン結合させるという方法を開発した。4級化剤として, Glycidyl Trimethyl Ammonium Chloride (GTMAC) を用いた。GTMACは片末端がエポキシ基となっているため, アミノ基をはじめ, 水酸基, カルボキシル基等に容易に結合する。一方の片末端にはカチオン性官能基があり, アニオン性があるヘパリンと強くイオン結合できる。ヘパリン量およびその分布はGTMACの結合量と結合部位でコントロール可能である。ヘパリン化の効果を評価する第1のテストとして, 牛心膜をこの方法でヘパリン化し, GTMAC量, ヘパリン量, およびPBS内へのヘパリンの徐放性を計測した。その結果, GTMAC量とヘパリン量は平行的相関関係にあること, および結合ヘパリンは, PBS内に3週間で60%放出されることが判明した。第2の実験として, コラーゲン被覆糸を本方法を用いてヘパリン化し, 末梢静脈内に挿入して血栓付着を評価した結果, コントロール群には血栓が付着したが, ヘパリン化群は血栓付着を阻止した。第3の評価試験として, 内径3mmの成犬頚動脈を処理した代用血管内面を本方法でヘパリン化し, 代用血管に要求される抗血栓性として充分か否かを成犬頚動脈, 大腿動脈に植え込み評価した。その結果, ヘパリン化代用血管は全例開存し, 内面には血栓の付着を認めたかった。以上の結果, GTMACを用いた本研究のヘパリン化方法は, 制御しやすく, かつその効果が良好である簡単で優れた方法であることが判明した。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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