人工臓器
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15 巻, 1 号
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  • 松田 武久
    1986 年 15 巻 1 号 p. 1
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 浅野 献一
    1986 年 15 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工臓器と生体との適合性について心臓代用弁を例に挙げて論述する。第1は代用弁の生体への適合性で、 血行動態、 抗血栓形成性、 耐久性を求めてデザイン、 材質が検討開発されたが尚、 理想的代用弁の域に達していない現状である。第2は病的心臓からみた代用弁の適合性で、 如何に有効安全にこれを適応するかについて狭小大動脈弁輪における弁輪拡大術を応用した大動脈弁置換術、 後尖、 腱索、 乳頭筋を残す僧帽弁置換術を例に挙げて説明する。両者の適合性はそれぞれの側から考察されるべきものがある。
  • 松田 武久
    1986 年 15 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液循環器系医用材料としては, 1)繰り返し拍動に耐える弾性体としての力学的性質と耐久性, 及び2)血液適合性の両者を兼備することが必須である. セグメント化ポリウレタンが今後とも循環系臓器の基本材料としての位置ずけが不変であることの妥当性が論じられた. 過去5年間の循環器病センターにおけるセグメント化ポリウレタンの生体適合性に関する研究を総括した. 従来から血液ポンプに用いられている疎水性SPUの慢性期での生体適合化機構について著者らが先に提出した多重蛋白質層形成による不活性化機構を概説した. 一方, 新たに開発した親水性ポリウレタンは表(界)面構造とも疎水性ポリウレタンと大きく異なることを明確にし, 血液との相互作用の様式も異なることが結論された. 親水性ポリウレタンに合成抗トロンビン剤を均一に分散させて容易に一段で徐放システムを賦与できる方法を開発し, この方法が一定期間血栓性を保証するシステムとして有用であることが示された.
  • 筏 義人
    1986 年 15 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは, 表面に高含水率薄層すなわち散漫層をもつ材料こそが血液成分の付着を拒否する抗血栓性材料と考えている。まず満足する力学特性をもつ材料を探し出し, その表面を出来合いの非イオン性水溶性高分子を共有結合するか, 非イオン性水溶性モノマーを表面グラフト重合するかによって改質する。改質した材料は, いずれの方法による場合も, 水と接触させると, 材料表面が散漫構造となり, タンパク質吸着も細胞の付着も阻止する。ただし, 単に表面にグラフト鎖をもたせばよいというのではなく, 生体成分と相互作用しない不活性な表面となるためには, グラフト量に最適値が存在する。これまでに得られた結果によると, in vivoにおける血栓生成テストにおいても, タンパク質を最も吸着しにくい最適のグラフト量をもつ散漫表面が最良の抗血栓性成績を示した。
  • 丹 沢宏
    1986 年 15 巻 1 号 p. 16-18
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    2種の高含水率高分子材料(合成ヒドロゲル)の血液適合性を支配する要因について考察する。イオン結合によるヘパリン化ヒドロゲルの抗血栓性には, 材料表面と接触している循環血流のstagnant layerに最小有効ヘパリン濃度が保持されていることが望ましい。したがってこの材料は, 使用目的・条件によって設計仕様をかえる必要がある。非ヘパリン化ヒドロゲルの血液適合性は, 単に構成ポリマーの親水性や含水率だけではきめられない。長さの異なるポリエチレングリコール側鎖を持ったメタクリレート系ポリマーに論いては, その側鎖の分子運動性およびヒドロゲル中の水の動的構造が血液適合性と関連するのではないかという推論が得られた。
  • 杉立 彰夫
    1986 年 15 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在, 臨床で使用されている各種Polymer tubeに, 積極的に抗血栓性を付与する目的で, 線溶酵素剤, urokinase(UK)を固定化し, 局所線溶能を有する材料を作製した。これらのUK固定化tubeの抗血栓性を, 局所線溶の面から基礎的に検討したのち, 臨床応用し, その有用性を評価した。
    UK固定化の担体として用いたtubeは, (1) Nylon, (2) Polyester elastomer, (3) Poly vinyl chloride, (4) Silicone, (5) Polyurethane, (6) Ethylene vinyl acetate copolymerなどである。
    何れのPolymerを担体としてもUKは固定化しえた。個定化UKの線溶活性は, 室温保存下で, 少なくとも2年間は安定であった。抗血栓性材料として臨床使用した場合, 従来の材料と比較して良好な結果が得られた。しかし, 担体によっては, 硬度や弾力性に問題があったり, 容易に劣化が生じたり, “線溶能の維持”以外に, 種々な臨床上の問題に遭遇した。
  • 高木 淳彦
    1986 年 15 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体本来の抗血栓性を備えた血管内皮細胞を合成血管の内面に植え付けて, イヌへの移植実験をおこなった。0.1%コラーゲン分解酵素により, イヌ外頸静脈の内皮細胞を採取したのち, 組織培養技術を用いて細胞を増殖させた。その後, in vitroで, 内径6mmの合成血管内面に回転法によって細胞を植付けた。このグラフトを静脈を切除した同じイヌの大腿動脈にバイパス移植し, 4週間後に回収した結果, 良好な内皮形成が認められた。この方法は, 今後, 小口径代用血管の開発に利用される可能性が高いものと考える。
  • 出月 康夫, 鶴田 禎二
    1986 年 15 巻 1 号 p. 26
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 山崎 善弥, 金井 福栄, 出月 康夫, 井上 昇
    1986 年 15 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在のところもっとも頼りになる実用的人工肝補助法として, 著者らは膜型血漿分離器を用いる血漿交換と血液透析を組み合わせた人工肝補助システムを, 主として急性肝不全を対象に臨床応用を行って来た。この臨床治験から得られた問題点解毒面の不充分, 大量新鮮血漿の必要それに伴う肝炎, アレルギの合併などの解決の一助とて人工肝補助システム性能の向上, 吸着, 透析, 濾過による他の血液浄化法の利用, 自家血漿浄化再利用などが考慮され, この面から研究について述べる。界面活性剤添加の必要のないポリオレフィン膜素材を用いた新規な血漿膜を開発した。本膜は性能的, 血液適合性について既存膜より優れており, 本膜によるドナー採血漿, 血漿交換が実用化され, 同時採血漿, 血漿交換法への応用が期待される。改良型胆汁・ビリルビン吸着材(10NEX)の研究も推進しつつある。人工肝補法の進歩とともに集学的治療による肝不全患者治療成績の向上が期待される。
  • 天野 泉
    1986 年 15 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    69例の急性肝不全に対し, Charcoal Hemoperfusion, PAN膜透析およびプラスマフェレーシスにて治療を行ったが, 救命率はそれぞれ18%, 17%, 17%であった。脳浮腫の合併率は50%以上であり, 特に高度のアルカローシスを持続する症例に多発した。救命率の特徴は, 治療開始時の血中ビリルビン値15mg/dl以下, 血中総アミノ酸濃度150mg/dl以下であった。
    FFP4lとFFP 9.6l使用時のプラスマフェレーシス実施における患者血プロトロンビン時間の変化を比較した。FFPの大量使用は一時的であれ効果がみられ, 肝機能障害の程度次第では期待できると思われた。
  • 山本 実
    1986 年 15 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝不全に基づく肝性昏睡で意識レベルがIII~IVの段階で治療を開始した急性肝不全患者56症例(劇症肝炎43症例, 急性肝炎5症例, 妊娠性急性脂肪肝8症例)ならびに慢性肝不全15症例(肝硬変8症例, 閉塞性黄疸7症例)に対しcharcoal hemoperfusion, cuprophan membrane hemodialysisおよび血漿交換を併用あるいはPlasmapheresis単独で治療した。劇症肝炎症例の救命し得たのは8症例のみであるが, 妊娠性急性脂肪肝症例は8症例全例救命し得た。急性肝炎は全症例死亡した。
    妊娠性急性脂肪肝は臨床症状が類似する劇症肝炎と異なり, 肝実質の壊死および門脈域の細胞浸潤などの炎症変化は認められず, 劇症肝炎に比較し, 救命し得うる疾患である。経過中AFPの上昇が救命し得る症例の指標となった。肝硬変4症例は週1回の血漿交換で長期にわたって症状が改善した。閉塞性黄疸7症例は全症例死亡した。
  • 大内 清昭, 松原 修二, 浅沼 義博, 千葉 純治, 佐藤 寿雄
    1986 年 15 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    術後重症肝障害13例に対して血漿交換療法を施行した。長期閉塞性黄疸による胆汁性肝硬変症の2例に対し, 現在まで49, 48回の血漿交換を安全に施行でき, 血清ビリルビンの著増を抑制し延命効果を認めている。一方, 術後早期に肝不全に陥った11例のうち4例は肝硬変合併例である。肝切除術後のビリルビン上昇が緩慢で昏睡を認めない1例のみが救命できており, 他の肝壊死の徴候がみられる昏睡合併例はいずれも死亡している。肝硬変非合併の7例では意識の改善は6例にみられたが生存は3例であった。救命例は死亡例に比し治療開始までのビリルビンの上昇は緩慢であり, 治療前のアミノ酸異常も軽度であった。死亡例では血漿交換により意識障害およびビリルビン値の改善がみられた症例も, 術後感染による敗血症, DICを合併して死亡しており, 多面的な治療の必要性が示唆された。
  • 平澤 博之, 小林 弘忠, 添田 耕司, 林 春幸, 菅井 桂雄, 室谷 典義, 伊藤 靖, 大島 郁也, 小高 通夫, 磯野 可一
    1986 年 15 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝不全症例に対するplasma exchange(PE)は現在広く行なわれているが, その適応決定に関しては, 末だ適当な指標は存在しない。本研究は, 肝不全症例に対するPEの適応決定の指標とその限界及び問題点を検討することを目的とした。1978年9月より1985年8月までに当施設で行った急性肝不全27例, 術後肝不全及び高ビリルビン血症26例の計53例に対する237回のPEを対象とした。前者における救命率は33%, 後者では27%であり, 硬変合併の肝不全症例に澄ける救命例は1例もなかった。これら症例において, 動脈血中ケトン体比(AKBR)及びosmolality gap(OG)を検討すると, AKBR0.2以下及びOGがPEによっても正常値域に低下しない症例に澄いては救命例はなく, これらは適応決定の良い指標であることが示唆された。またPEにより高Na血症や, metabolic alkalosisを来す症例もあるので充分なる注意が必要であることも示唆された。
  • 佐中 孜, 峰島 三千男, 佐藤 博司, 寺岡 慧
    1986 年 15 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    筆者らの施設では, 1974年から1985年にかけて11名の劇症肝炎患者に血漿交換療法を実施した。今回はこれらの患者を対象として, 血漿交換療法の適正化と限界の解明を試みた結果, 次の成績をえたので報告する。
    (1)劇症肝炎の予後に影響する因子として合併症の数と組み合せが重要で, 3以下であれば救命の可能性が高いが, 急性腎不全と感染症. DICを共通に持っているときは全例死亡していた。
    (2)治療時間という比較的短い時間の範囲では血清ビリルビンの動態をワンコンパートメントモデルで説明できた。その結果, 異なった循環血漿量をもつ患者ごとに総ビリルビンの血中濃度に下げるのに必要な置換血漿量が推算できることになる。
    (3)今回, 提唱したBilirubin Appearance Rate (BAR)は, これによってビリルビン産生量が推測され, 患者の予後, 血漿交換の量・回数を決めるのに有用な指標になるものと判断された。
  • 水戸 麺郎, 酒井 清孝
    1986 年 15 巻 1 号 p. 51
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 大平 整爾, 阿部 憲司
    1986 年 15 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析療法に伴う感染症は、(1)血液透析を必要とする末期腎不全の病態に起因するものと(2)血液透析という一種の体外循環操作に起因するものとに大別される。
    透析患者は細胞性免疫能の低下を主体とする免疫不全の状態にあり、これに慢性貧血、低栄養さらに代謝異常などが関与して彼等に易感染性をもたらしている。感染の機会は頻回の内シャント穿刺、体外循環操作、輸血、長期入院(院内感染)などによって増加する。Blood access感染は外シャントの激減によって明らかに減少したが人工血管の使用増加が新らたな問題を惹起している。感染は透析患者死因のうち約12%で3位を占め、blood access由来の敗血症、呼吸器・尿路感染が主体である。その他、結核、心内・外膜炎、骨髄炎、虚血性腸管壊死など診断困難なものもあり、これ等は不明の熱として処理されることもある。以上の諸事項について臨床経験にもとづいて考察を加えた。
  • 川口 良人, 北条 敏雄, 中尾 俊之
    1986 年 15 巻 1 号 p. 57-58
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    CAPDにおける感染症は腹膜炎(P)と皮下トンネル感染(STI)が重要である。P, STIの現況とホスト側の感染防御因子につき報告する。80・1~84・12の期間に実施した71症例につき解析した。平均CAPD期間は15.5ケ月, 基礎疾患は慢性腎炎52.1%, 糖尿病35.2%, その他12.7%であった。Pの発生頻度は20.1ケ月に1度, CAPD継続例48例では27.5ケ月に1度であり, 糖尿病と非糖尿病の発生頻度はそれぞれ19.4ケ月, 21.3ケ月であった。CAPD中止例23例中43.5%がPがその原因であった。起炎菌はS, epidermidis, S, aureusがそれぞれ25.9%を占めた。STIについては41症例について解析し9例にカテーテルの入替, 一時的抜去を必要とした。液性免疫, T細胞機能に異常はみとめられず, 感染発症の最大要因は操作上の問題と考えられた。PはCAPD中止の最大の原因となり得るがSTIは必しもCAPDの中止の原因とはならなかった。
  • 寺岡 慧, 佐中 孜, 鈴木 利昭, 長沼 信治, 佐藤 博司, 中川 芳彦, 中島 一朗, 林 武利, 河合 達郎, 八木 沢隆, 渕之 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析患者の免疫能について, まず患者自身の免疫担当細胞(lmmunocompetentcell)の機能を検討し, ついでそれらが透析中に起こると考えられる生体反応によりいかなる修飾を受けるかについての検討を試みた。透析患者の免疫担当細胞の機能については, 好中球, リンパ球とりわけT細胞, natural killer細胞, killer細胞などの活性の低下が認められた。これらの機能障害は血液透析, 血液吸着などにより必ずしも完全には回復しえないが, これについてはprotein-binding inhibitorの関与の可能性も否定できない。また透析時に惹起されると考えられる種々の生体反応, とりわけ補体系およびアラキドン酸カスケードの活性化がこれらの免疫担当細胞の機能障害を起こす可能性については, これらが生体内において複雑な反応系を形成しつつ免疫応答と相互に作用しあっており, その全貌の解明にはなお検討が必要であろう。さらに網状内皮系の形態学的変化, 非特異的防御機構である皮膚粘膜関門の機能障害も透析患者の免疫能の低下に関与していると考えられる。
  • 村瀬 允也, 阿部 稔雄, 石原 智嘉
    1986 年 15 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ペースメーカ植え込み手術症例505例を対象として, 感染発生例について検討した。観察期間は平均5.6年, 2832患者・年であった。感染は20例(3.9%)に発生し, 142患者・年に1回の発生であらた。前回手術より感染発生までの期間により6ケ月以内13例, 1年以上7例に大別できる。6ケ月以内例は前回手術と関連した感染と考えられ, 手術回数70回に1回の発生であった。1年以上経過後発生例では旧型の大きいジェネレーターに発生しており, 2138患者・年の観察期間で305患者・年に1回の発生であり, 新型の小さいジェネレーターには692患者・年で発生がなかった。敗血症進展例3例中2例が死亡したが, 積極的に電極除去をおこなっで以後の死亡例はない。経静脈電極の改善により, 植え込み手術の容易, 安定性が得られたが, 感染時の抜去が困難で治療に難渋する。植え込み手術時の厳重な無菌操作と各種の工夫が必要であり, 感染発生時に抜去が容易な電極の開発がのぞまれる。
  • 小柳 仁, 西田 博, 手塚 光洋, 八木 葉子, 中野 清治, 清野 隆吉, 福地 晋治, 副島 健市, 今村 栄三郎, 遠藤 真弘, 橋 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外―時使用の人工臓器としてIABPおよび各種補助循環, 補助心臓, 体内埋め込み型として人工弁をとりあげ, 外科治療の現場での感染との関係を検討した。
    侵襲の少ないIABPは感染の関与がほとんどみられず, Blood accessの規模が大きくなってゆくにつれ補助循環法の合併症として感染が浮び上がってきた。Blood access及び情報accessの節減簡素化が臨床成績の向上に大切である。
    置換弁心内膜炎はきわめて安定している人工弁置換患者の予後をおびやかす原因として血栓症と双壁である。機械弁よりは生体弁の方が発生頻度が高く, 起炎菌はNVEより重篤複雑なものが多い。とくに大動脈弁輪の感染はConotruncal partが各心腔の中心に位置することからきわめて重篤化し易く, 感染巣と人工臓器とを遠ざけるTranslocationなどの術式の工夫が必要である。
  • ―人工弁について―
    小松 作蔵, 数井 暉久
    1986 年 15 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工弁の感染prosthetic valve endocarditis (PVE)の診断及び治療法について検討した。教室で1964年より1985年9月末までに施行した人工弁置換術829例のうちPVEは38例(4.6%)であった。大動脈弁位(A)24例、僧帽弁位(M)の10例、A+M4例であり、早期PVE16例、晩期PVE22例で、全体の15例(39.5%)に起因菌を同定し得た。治療法別では、内科治療26例で5例の生存を得、内科治療と外科治療の併用は早期PVE5例、晩期PVE7例であり、手術適応は心不全、感染遷延、全身性塞栓症などであった。手術手技は感染弁摘除、再弁置換が原則である。大動脈基部膿瘍(ARA)合併3例にtranslocation法を施行した。手術成績は早期死4例(33.3%)、遠隔期に再々弁置換3例、遠隔死3例を認めた。PVEは早期診断、早期治療が重要であるが、活動期例の手術適応、手術時期及びARA合併に対する手術手技などが今後の課題である。
  • 太田 和夫, 武内 敦郎
    1986 年 15 巻 1 号 p. 75
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 本郷 忠敬, 堀内 藤吾, 香川 謙, 仁田 新一, 佐藤 尚, 内田 直樹, 三浦 誠, 秋野 能久, 鈴木 康之, 片平 美明, 山家 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭46年以来, 左心補助人工心臓の研究を行ない, 近年では10週までの生存実験が安定して得られているが臨床応用に際してはその信頼性を鑑みて, 東京大学の開発したシステムを用いて, 従来の機械的補助法の限界を越えた重症心不全に本法を行った。3例のうち冠血行再建術術後患者で本邦初の長期生存, 社会復帰を可能とした症例を経験し, 補助人工心臓の有用性を臨床的に確認した。補助心臓は将来の外科治療体系に大きな改革をもたらすものと期待されるが実地臨床応用にはなお解決すべき問題も多い。本法の補助効果は従来の機械的補助と較べるとはるかに強力であった。術後管理も施行以前に予想したものよりは安易であり, 本法の適用は多臓器障害を併発する以前の早期使用が望ましいと考える。
    補助心臓使用時の自然心臓の機能評価法を臨床的に確立することが重要な課題である。今回の臨床ではUCG法による左室後壁ならびに大動脈の開閉状況及び薬物負荷テストが有力な情報となった。
  • 藤正 巌, 井街 宏, 中島 正治, 満渕 邦彦, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 本村 喜代二, 塚越 茂, 渥美 和彦, 滝戸 直人
    1986 年 15 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    完全人工心臓は空気駆動方式の実用化が開始された時点でその臨床使用が開始されたが, その試みはいまだに時期尚早の感がぬぐい切れない。当施設に論いては一貫して体外に血液ポンプを置く形式の人工心臓の研究を行い, 空気駆動方式のサック型人工心臓により, 心細動型では174日, 拍動する自己心を持つ完全人工心臓では288日, 心切除方式のものでは344日実験動物の最長生存例を得るに至っている。しかし, このいずれのシステムも, いまだ完全の域に達しているとはいえず,長期使用に際しての, ポンプの石灰化, 血栓塞栓症の問題と, 生体の循環系との不十分な適応による種々の臓器不全がいまだ残存しているのが明らかとなっている。海外他施設で行われた臨床例を見てもこれらの問題の他に, 当施設では存在しない各種のポンプや駆動系の故障による問題も内包し, いまだ人工心臓は, 永久に使用するには不完全な装置であることを明示している。ここでは当施設におけるこの形式の人工心臓の一時的な臨床使用に対する見解を示すこととする。
    一方, 完全人工心臓は近い将来, システム全体が内蔵されることが明らかであり, 当施設でも, 数年前より完全埋込の人工心臓の開発が進められつつある。その開発には人工心臓血液ポンプの設計とその駆動方式の選定, エネルギー蓄積と変換の手法の開発, エネルギー伝送や体外でのエネルギー補給の方法などの開発が必須でありしかもその耐久性, 防湿性, 制御性など検討する課題は山積みしている。
    本論文に於いてはこれらの開発の道程を述べると共に, その臨床応用に至る見通しも論ずることとす.
  • 高野 久輝, 中谷 武嗣, 藤田 毅, 阿久津 哲造, 曲直 部寿夫
    1986 年 15 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    独自の補助量を自動制御しうるLVADシステムを開発し、動物実験での検討を重ね、幼児1例を含む7症例に適用し、5例の高度心不全を回復せしめた。自動WADシステムは1)全身の循環を良好に維痔し、2)初期に左室負荷を減じ、徐々に負荷を増加させる事により損傷心筋の治癒代償を促進して心不全を回復せしめた。3)これら循環制御は左房と総拍出量の定値制御による補助量自動制御機構により、適正に、半ば自動的に行なわれた。4)従来の補助循環の限界を越えた高度心不全に対し、'極めて強力な補助手段であった。5)なお右心不全合併でも、肺血管抵抗が正常ならば、右房圧を高めることとカテコラミンの併用により、左側VADのみでも全身循環を維持し得た。6)一方適用が遅延すると不全心が回復しても他臓器に後遺症を招来した。この結果未だ長期生存を見ていない。7)臨床においては、完全なる救命のためには、LVADの適用の時間的判断と速やかな実行が必要である。
  • 岩谷 文夫, 星野 俊一, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 安藤 正樹, 高野 光太郎, 萩原 賢憎, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 佐戸川 弘之 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    教室では国産人工心臓の開発を目的として, 1980年より動物実験を開始したが, 過去5年間に39頭に対し, 40回あ置換手術が行われた。人工心臓は姫路市, トーマス技研製のトーマス型で, 1回拍出量95mlと65mlの2種類を実験目的に応じて使用した。長期生存を主目的としたが, 心不全作成, 再置換手技の検討を目的としたモデル実験も行なった。最長生存日数は仔ウシでの66日であったが, 3週間以上の生存は5頭(13%)で, 全体の62%が3日以内に死亡した。心不全モデル実験は4頭に行なったが, 再置換手術まで行なったのは1頭のみであった。死亡原因としては人工心臓に関連したもの, 血栓塞栓が多く, やはり耐久性, 抗血栓性が課題であった。最近では実験動物を成長の少ない成ヒツジにかえたが, 成績はむしろ仔ウシの時より悪く, 10日以上の生存は得られなかった。体外循環, 輸血管理など基礎的研究が必要と考え, 現在検討中である。
  • ―とくに補助人工心臓―
    瀬在 幸安, 長谷川 隆光, 宮本 晃, 北村 信三, 梅田 正五, 川野 幸志, 進藤 正二, 陸川 秀智, 塩野 元美, 小笠原 弘二, ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1985年6月までに, 本邦における補助人工心臓の施行例は15例で, とくに本年はすでに9例が実施されており, 不全心にたいする補助人工心臓の必要性が急激にたかまってきている。われわれの施設では3例を経験しており, いずれも開心術後のLOS1例と体外循環からの離脱困難例にたいする2例であった。これらのうち2例が補助人工心臓からの離脱に成功したが, 使用前からの心原性ショックによるMOFの1例は本法により一時的には改善したが, 再びMOFが増悪して離脱できないままに死の転帰をとった。これらの自験例をもとに, 補助人工心臓に当面する問題点, とくに本法の適応基準, ポンプ(抗血栓性, サイズ), カニューレ,駆動方法(同期一非同期,制御方法,IABPとの併用), さらに補助入工心臓からの離脱や長期生存の障害となっているMOFについて述べ, 今後の重要な研究課題であることを提示した。
  • 渥美 和彦
    1986 年 15 巻 1 号 p. 98
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―人工血管による血行再建術の問題点
    中村 和夫, 岡田 昌義
    1986 年 15 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    最近の10年間に教室において手術された人工血管使用症例は動脈血行再建240例, 静脈血行再建35例, 計275例であり, 使用された人工血管は初期にはテトロン (knitted Dacron), その後Sauvageのdouble velourグラフト, 最近ではe-PTFE及びそのリング補強タイプなどが用いられており, サイズは6~24mmであった。動脈再建の標準術式としてのaorto-ilio-femoralバイパスにおける3年開存率はSauvageグラフトの場合97%と良好で, 長いグラフトを使用するaxillo-femoralバイパスでも3年開存率80%と満足すべき成績が得られた。一方, 静脈の血行再建はもっぱらe-PTFEグラフトが使用され, 1~2ヵ月の開存率は73%であったが, Budd-Chiariの1例では術後4年7ヵ月の現在開存して健康な日常生活を送っている。しかし末梢静脈では長期の開存を得るのは困難であり, 末梢静脈の血行再建と細小動脈, とくに冠動脈の血行再建用人工血管の開発が今後の課題であろう。
  • 松本 博志
    1986 年 15 巻 1 号 p. 103-105
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小口径血管の血行再建には自家静脈の使用が第一選択とされているが, 代用血管を用いずしては血行再建の不可能な事も事実である。現在使用されている小口径人工血管はEPTFE人工血管, Human umbilical vein, Dacron EXS人工血管で, ―応は臨床評価をうけるだけの時間的経過はえたものと考えられる。その使用に制約のある事は当然で, 将来新しく開発されるであろう人工血管の開発研究もおこなわれており, 完全な抗血栓性をそなえた人工血管, 内皮細胞を増殖させた人工血管, コンプライアンスの面から生体血管に近い人工血管などが検討されている。
  • 江口 昭治, 宮村 治男, 丸山 行夫, 小菅 敏夫
    1986 年 15 巻 1 号 p. 106-107
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    大血管血行再建における人工血管の基本的問題点はほゞ解決されているが, 細部については更に改善工夫が試みられている。一方, 細い動脈, 静脈系の血行再建においては種々の問題があり, 未だ必ずしも満足すべき成績を得ているとはいえない。こゝでは教室における人工血管使用の成績, 問題点についてふれた。
  • 毛利 平
    1986 年 15 巻 1 号 p. 108
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 久保 良彦, 笹嶋 唯博, 西岡 洋, 小窪 正樹, 和泉 裕一, 稲葉 雅史, 佐藤 綾子, 森本 典雄, 中山 一雄, 境 普子, 吉田 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 109-113
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    動脈系のうち、大動脈およびその主要分枝再建に必要な直径6mm以上の人工血管では、従来からの織布人工血管 (ダクロン・テフロン) で臨床的にほぼ満足できる成績がえられ、これらの材質の耐久性も十分と判定される。問題点として少数ながら感染、吻合部動脈瘤、遅発性graft出血が挙げられる。しかし、いずれも人工血管の改良、吻合部補強、人工血管sealingの工夫などの効果がうかがわれ、今後の成績向上も期待できる。より末梢の血行再建に必要な人工血管では、粗い織布構造より平滑な内面をもつ材料 (保存ヒト臍帯静脈, PTFE) が有利と判定される。しかし、な誇自家静脈の成績には遠く及ばず抗血栓性, 材料の研究と共に吻合形状, 物性が関与すると考えられる吻合部内膜過形成の対策がessentialと思われる。静脈系では大口径領域の血行再建がPTFE, 保存ヒト臍帯静脈の出現により外科医の手の届く段階に達した。しかし、その遠隔成績の追及は極めて重要と思われる。
  • 野一色 泰晴
    1986 年 15 巻 1 号 p. 114-117
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在用いられている主な人工血管のもつ問題点を指摘し, これらを改良すべく行われている研究の動向, 開発の方向等, 今日の時点での研究成果を示して解説した。次にこれらをもとに将来の方向, 開発が期待されている人工血管等についての展望を述べた。例えば, 布製人工血管のうちで, 高有孔性のものは新生内膜の治癒が良好であるが, 植え込み後の出血が問題であり, 低有孔性のものは, 出血はないが治癒が悪い。EPTFEや膀帯静脈人工血管のもつ抗血栓性は弱い。これらの内膜治癒も悪い。このような現状を打破するために工夫されたヘパリン化技術や, セグメント化ポリウレタンのミクロ相分離構造のもつ抗血栓性を人工血管に導入する研究を解説した。これらは研究過程ではあるが良い成果を得ている。また, 将来の人工血管として, 静脈弁つき人工血管とか, 成長する人工血管, 感染に強い人工血管等の開発の可能性, 手がかり等を併せて解説した。
  • 田辺 達三
    1986 年 15 巻 1 号 p. 118
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • T. KISHIMOTO, S. YAMAGAMI, T. SUGIMURA, Y. YAMAZAKI, H. TANAKA, H. YOS ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 119-121
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Ex vivo and in vivo studies on continuous arteriovenous hemofiltration (CAVH) were carried out using two different hemofilters: Diafilter-20 (Amicon, Mass, USA) and PAN-50P (Asahi Medical, Tokyo, Japan). The ultrafiltration rate (UFR) and sieving coefficient (SC) were obtained from dogs in which uremia was induced by bilateral ureteral ligation. UFR was entirely dependent on blood flow (Qb) and the pressure difference between hydrostatic transmembrane pressure (TMPH) and protein oncotic pressure, and it inversely correlated with hematocrit. SC for urea, creatinine and electrolytes was 1.0, and that for inulin was 0.8. No deterioration of UFR or SC for inulin wass observed with operation under spontaneous pressure difference. When CAVH, slow continuous ultrafiltration (SUF) and continuous hemofiltration (CHF) were applied to patients with overhydration who were resistant to conventional therapies and to those with multiorgan failure including acute renal failure, the clinical effectiveness was excellent in the patients with intractable overhydration and cardiac failure. Although mortality of the patients with multiorgan failure was still more than 75%, the control of these patients was better with CAVH and CHF. Therefore, these methods have better therapeutic potential in controlling multiorgan failure including acute renal failure.
  • Seinosuke NAKAGAWA
    1986 年 15 巻 1 号 p. 122-124
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    In its true sense of the word, CAPD cannot be defined as an artificial organ, for the process utilizes bilogical peritoneum as a dialysis membrane. When the ability to maintain the life of uremic patients is considered, however, it should be included in the family of artificial organs in a broad sense. Some characteristic aspects of CAPD as an artificial organ include (1) artificial vessel in view of the possibility to be performed in patients without blood access, (2) artificial pancreas in view of a favourable administration route of insulin in the patients of insulin-dependent diabetes induced chronic renal failure, (3) artificial endocrine organ in view of the ability to prevent delay of catch-up growth in pediatric uremic patients. Needless to say, the most important role is (4) artificial kidney.
    The most remarkable characteristic of CAPD in comparison with dialysis, Hype artificial kidney is (1)low efficiency of diffusion and ultrafiltration, (2) continuous and persistency of the treatment mode and (3)biocompatibility. These merits of CAPD have resulted in the simplification of the modality and safety, bringing about lack of dysequilibrium syndrome, stability of cardiovascular system, easily obtainable high UFR, allowance. for liberal intake of food and water for patients.
    The target of reserch and developement in the field of dialysis type artificial kidhas hitherto been high efficiency associated with complex mechanical apparatus and monitors. CAPD uncurtained some blind spots which is worth being incorporated into R-and-D of artificial organs. This paper intends to review those productive blind spots.
  • 前田 憲志, 新里 高弘
    1986 年 15 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    短時間透析を行うには, 単位時間あたりの透析能率を増加させねばならない。そのためには, (1)濾過透析の実施(2)血流量の増加(3)不均衡症候群対策が必要になる。
    置換液を使用しない濾過透析infusion free HDFがこの目的に最も適している。
    この方法では, 血流量を250~300ml/minとし, 3時間, 週3回の治療が可能となる。不均衡症候群対策として, 重曹透析液の使用, L-carnitine製剤の投与を行っている。この方法を用いて2時間透析が試みられているが, この場合血流量500ml/minを必要とし, blood accessの改良が必要となる。不均衡症候群対策として更に工夫が必要となる。従来5時間, 週3回の治療による多数例の成績を参考にし, この成績より劣らない条件をまず考えるべきである。そして更に長期の成績を慎重に比較すべきであろう。現在のところpush/pull HDFを用いて3時間, 週3回の条件ではじめるのが適当である。
  • 大坪 修, 渡辺 俊文, 五十嵐 浩二
    1986 年 15 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小型人工腎臓としては, CAPDやCHF (Continuous hemofiltration) なども含まれるが, CAPDは感染, CHFは活動性の制約などの問題がある。
    現在の透析を主とした小型人工腎臓としては, 各種の吸着剤をくみあわせた灌流液再生式が研究されてきている。この灌流液再生式人工腎臓の問題点としては, 1) 尿素を直接吸着するものがない, 2) 燐の吸着剤であるアルミナによる副作用, 3) 吸着剤の量がおおく, 重量が重くなる, などがある。
    このためには, 1) 尿素吸着剤としてシリカ系吸着剤の開発, 2) 燐を吸着するイオン交換樹脂の開発, 3)ワンタッチで交換可能なカセットタイプの吸着カラムの開発, などをすすめている。
    しかし, より軽い, 高性能の装着型人工腎臓の開発には, より効率, 安全性の高い吸着剤の開発が必要である。
  • 峰島 三千男
    1986 年 15 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液浄化法が多様化するにつれ, それに用いられている各種性能指標の妥当性, 意義が少しずつ異なってきている。本研究では最も利用頻度の高いクリアランス, ふるい係数について使用上の問題点を明らかにすることを目的とした。クリアランスについては式中の濃度, 流量として血漿基準の値を用いるか, 全血基準の値を用いるかが問題となるが, 臨床データから得られた物質移動速度を求めたところU. N. については全血基準, クレアチニン, 尿酸については両者の中間に位置することが明らかとなった。また電解質の分離膜透過速度は拡散移動だけでなく電位差移動によっても強く影響を受けている。一方現在論文等で用いられているふるい係数はいずれもみかけの指標であって、流量条件や流動方式によって値が変化する。臨床データから膜自身の分離性能を表わす指標を求めることは不可能であるが, 学会レベルで評価基準を設けるか, 少くとも流量条件, 流動方式を明記すべきものと思われた。
  • 斎藤 明
    1986 年 15 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腎の糸球体の物質除去と血液透析のそれとを近づけるために, 従来のダイアライザーやフィルターよりもcut-off pointの高いダイアライザーを用い, 重症合併症を有する長期透析患者に血液透析を行い, 臨床的評価から, 問題点を明らかにした。KF-101-12C (EVAL) を用いた臨床評価では, 中分子量ペプタイドの赤芽球造殖抑制因子の除去に伴うヘマトクリットの改善をはじめ, 骨痛, 末梢神経障害, 掻痒症などのし改善が認められた。しかし, 中分子量物質と小分子量タンパクの除去量増加のみならず, アルブミン, トランスフェリンなどの除去も伴い, 低アルブミン, 高コレステロール血症の傾向を示した。これは, 分子量50000以上の物質の阻止率を著しく高くするような膜の開発が困難なところより起因している。合成膜系ダイアライザーに比し, セルロース系ダイアライザーであるDuo-Flux HP, TAF-120Sなどで目標に近づいてきているものの今後ひきつづく新しい膜の開発努力が必要である。
  • 内藤 秀宗
    1986 年 15 巻 1 号 p. 141-144
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    EVALのもつ抗血栓性は、膜が血液に接触した初期に付着する蛋白の選択性によるものであり、他の現在使用されている膜では、フィブリノーゲンが認められ抗血栓性を有しているとはいいがたい。しかし、透析を完全に抗凝固剤を使用せずに施行するのにはまだ、透析膜以外にも解決しなければならない点が多くある。今回は、これらについて述べるとともに、長期無抗凝固剤透析患者の血液化学的推移とヘパリン化透析患者との血液凝固や血小板機能などについて比較した。
  • 末岡 明伯
    1986 年 15 巻 1 号 p. 145-148
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在, 膜構造の異なる種々のタイプ膜が血漿分離, 血漿成分分離, 血液濾過および血液透析等血液浄化法に広く応用されている。
    濾過速度や溶質の分離率等血液の濾過性能は, これら膜構造と密接に関係し, 膜構造の相違によりそれぞれ濾過のメカニズムの違いが示唆された。各膜の血液浄化法への使用に際しては, それぞれ膜のタイプに応じた濾過操作や使い方, また目的に応じた膜タイプの選択が必要である。
    また膜から見た人工腎用透析膜の最近の動向については, 薄膜化による高性能化, 生体適合性にすぐれた膜の検討等が進められている。
  • 阿岸 鉄三
    1986 年 15 巻 1 号 p. 149
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 金 鐸東, 川崎 富夫, 左近 賢人, 上林 純一, 大城 孟, 森 武貞
    1986 年 15 巻 1 号 p. 150-153
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    前回わたくしたちはリポソーム化ヘパリンをラット静脈内に投与しその抗凝固作用を無処理化ヘパリンと比較した結果有意にリポソーム化ヘパリンで薬剤効果の延長を認め報告した。そこで今回わたくしたちはそのメカニズズムを検討する為〔14C〕-Phosphatidylcholineラベルリポソーム化ヘパリンを調製しこれをラット静脈内に投与して血中や, 臓器におけるリポソームの分解を検討した。その結果は次のごとくである。〔14C〕-phosphatidylcholineラベルリポソームの放射活性の減少は早期に起るがヘパリンの活性は長時間残存した。肝, 脾, 肺, 腎の各臓器を経時的に摘出しその取り込み率を調べると投与後10分で, 放射活性は肝, 脾, 肺で非常に高かったが腎では極めて低かった。また血漿中の〔14C〕-phosphatidylcholineの分解を溥層クロマトグラフィーにて検討した結果150分まではほとんど分解されなかった。このことよりリポヘパリンの除放は血中よりも臓器内で起ると推測された。
  • 野一色 泰晴, 宮田 暉夫, 伊藤 啓, 宮本 武明
    1986 年 15 巻 1 号 p. 154-157
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    医用材料をヘパリン化する方法として, 材料に4級化剤を直接結合させ, 次いでヘパリンをイオン結合させるという方法を開発した。4級化剤として, Glycidyl Trimethyl Ammonium Chloride (GTMAC) を用いた。GTMACは片末端がエポキシ基となっているため, アミノ基をはじめ, 水酸基, カルボキシル基等に容易に結合する。一方の片末端にはカチオン性官能基があり, アニオン性があるヘパリンと強くイオン結合できる。ヘパリン量およびその分布はGTMACの結合量と結合部位でコントロール可能である。ヘパリン化の効果を評価する第1のテストとして, 牛心膜をこの方法でヘパリン化し, GTMAC量, ヘパリン量, およびPBS内へのヘパリンの徐放性を計測した。その結果, GTMAC量とヘパリン量は平行的相関関係にあること, および結合ヘパリンは, PBS内に3週間で60%放出されることが判明した。第2の実験として, コラーゲン被覆糸を本方法を用いてヘパリン化し, 末梢静脈内に挿入して血栓付着を評価した結果, コントロール群には血栓が付着したが, ヘパリン化群は血栓付着を阻止した。第3の評価試験として, 内径3mmの成犬頚動脈を処理した代用血管内面を本方法でヘパリン化し, 代用血管に要求される抗血栓性として充分か否かを成犬頚動脈, 大腿動脈に植え込み評価した。その結果, ヘパリン化代用血管は全例開存し, 内面には血栓の付着を認めたかった。以上の結果, GTMACを用いた本研究のヘパリン化方法は, 制御しやすく, かつその効果が良好である簡単で優れた方法であることが判明した。
  • 菅原 健太郎, 薄場 彰, 阿部 幹, 本多 正久, 寺島 信也, 三浦 純一, 遠藤 幸男, 武藤 淳, 菅野 隆三, 竹重 俊幸, 井上 ...
    1986 年 15 巻 1 号 p. 158-161
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    There are two methods of V-V bypasses during anhepatic phase. The one is the forced circulation method (Group I) and the other is the circulation without pump using heparin coating tubes (Group II). In this report we studied the differences between these two methods. And the results were as follows: 1) In the Group I, the hemodynamics were kept in stable during bypass. 2) In the Group II, the hemodynamics were markedly unstable and they showed the cardiac failure. Therefore, it was suggested that the venous return was disturbed in the Group II. We conclude that the forced circulation method using pump may be the better way in the V-V bypass method during anhepatic phase of the orthotopic liver transplantation.
  • 中尾 昭公, 加納 忠行, 市原 透, 青木 英明, 国場 良和, 大倉 国利, 高木 弘, 森 有一
    1986 年 15 巻 1 号 p. 162-165
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    安全な同所性肝移植術を確立するために雑種成犬を用いて実験的研究を施行した。門脈と左外頸静脈, 下大静脈と右外頸静脈の間にベパリン化親水性カテーテル (東レ, アンスロン®) でバイパスを作成した後, 肝門部にて門脈を, 肝下部にて下大静脈を結紮遮断し, 門脈血ならびに下大静脈血を上大静脈ヘバイパスした。本バイパス法の安全性を全身血行動態と血液凝固線溶系変化を測定検討し証明した。次に本バイパス法を用いて同所性肝移植術を施行したが, 全身のヘパリン化もポンプも必要とせず, カテーテル内に血栓形成も認められず, 順調に門脈血と下大静脈血が上大静脈へ流入し, recipient犬の無肝状態に影ける血行動態は安定し, 時間的余裕を持って安全に手術が可能であった。本法による同所性肝移植術は安全な術式であり, 臨床応用も充分可能と考えられる。
  • 大城 孟
    1986 年 15 巻 1 号 p. 166
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 塩基性タンパク質―コラーゲン複合体の止血効果
    小平 和彦, 宮田 暉夫, 古瀬 正康, 野一色 泰晴
    1986 年 15 巻 1 号 p. 167-170
    発行日: 1986/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    プロタミンをコラーゲンに架橋結合させた複合体を止血材として応用した。本来コラーゲンには止血作用があり, コラーゲン単独の止血材は, いろいろ研究開発されている。コラーゲンの持っ止血作用を更に高め, 手術時の止血操作をできるだけ短縮することを目的として新しい止血材を開発した。プロタミンをコラーゲンに混合し固定化すると止血に要する時間はコラーゲン単独のものに比べて短縮し, プロタミンをコラーゲンの乾燥重量に対し5%の割合で混合・固定化したものは約4分の1に短縮した。また, ヘパリン100unit/kgを投与した雑種成犬で止血時間を測定したところ, コラーゲン単独からなる止血材では止血することができなかったが, プロタミンを固定化した止血材では止血が可態であった。プロタミンは, アルギニンが多く強塩基性であるためにコラーゲンの止血作用を増進させているものと思われる。
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