抄録
肝不全に基づく肝性昏睡で意識レベルがIII~IVの段階で治療を開始した急性肝不全患者56症例(劇症肝炎43症例, 急性肝炎5症例, 妊娠性急性脂肪肝8症例)ならびに慢性肝不全15症例(肝硬変8症例, 閉塞性黄疸7症例)に対しcharcoal hemoperfusion, cuprophan membrane hemodialysisおよび血漿交換を併用あるいはPlasmapheresis単独で治療した。劇症肝炎症例の救命し得たのは8症例のみであるが, 妊娠性急性脂肪肝症例は8症例全例救命し得た。急性肝炎は全症例死亡した。
妊娠性急性脂肪肝は臨床症状が類似する劇症肝炎と異なり, 肝実質の壊死および門脈域の細胞浸潤などの炎症変化は認められず, 劇症肝炎に比較し, 救命し得うる疾患である。経過中AFPの上昇が救命し得る症例の指標となった。肝硬変4症例は週1回の血漿交換で長期にわたって症状が改善した。閉塞性黄疸7症例は全症例死亡した。