人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
静脈用人工血管選択における仮性内膜形成状態の重要性
井島 宏児玉 亮井街 宏筒井 達夫三井 利夫堀 原一
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 15 巻 1 号 p. 375-378

詳細
抄録
静脈血行再建術に人工血管を用いた場合には, 大口径静脈におけるEPTFEの分節的使用以外は成功率が低い。しかし, これに一時的末梢側動静脈瘻を併設し, 約6ケ月以上後に動静脈瘻を閉鎖する著者らの術式は, 開存率を向上させた。動物実験においても, 動静脈瘻併設群の静脈置換術後の人工血管は, 材質を問わず96.2%と極めて高い開存率を得ることができた。
また, 開存人工血管の内腔を観察してみると, 仮性内膜が平滑で, かつ内皮細胞様細胞のきれいな配列を最もよく形成する人工血管は, 市販のhigh-porosity knitted Dacron graftであった。
以上より, 仮性内膜形成状態の最良である人工血管を選択することが晩期閉塞率を減少させ得るとする動脈での経験からは, 静脈でもそのようにすべきで, 静脈用人工血管としてもhigh-porousな親血栓性材料を用いる方がよいのではないかと考えられた。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top