抄録
筆者らの施設では, 1974年から1985年にかけて11名の劇症肝炎患者に血漿交換療法を実施した。今回はこれらの患者を対象として, 血漿交換療法の適正化と限界の解明を試みた結果, 次の成績をえたので報告する。
(1)劇症肝炎の予後に影響する因子として合併症の数と組み合せが重要で, 3以下であれば救命の可能性が高いが, 急性腎不全と感染症. DICを共通に持っているときは全例死亡していた。
(2)治療時間という比較的短い時間の範囲では血清ビリルビンの動態をワンコンパートメントモデルで説明できた。その結果, 異なった循環血漿量をもつ患者ごとに総ビリルビンの血中濃度に下げるのに必要な置換血漿量が推算できることになる。
(3)今回, 提唱したBilirubin Appearance Rate (BAR)は, これによってビリルビン産生量が推測され, 患者の予後, 血漿交換の量・回数を決めるのに有用な指標になるものと判断された。