抄録
血液透析療法に伴う感染症は、(1)血液透析を必要とする末期腎不全の病態に起因するものと(2)血液透析という一種の体外循環操作に起因するものとに大別される。
透析患者は細胞性免疫能の低下を主体とする免疫不全の状態にあり、これに慢性貧血、低栄養さらに代謝異常などが関与して彼等に易感染性をもたらしている。感染の機会は頻回の内シャント穿刺、体外循環操作、輸血、長期入院(院内感染)などによって増加する。Blood access感染は外シャントの激減によって明らかに減少したが人工血管の使用増加が新らたな問題を惹起している。感染は透析患者死因のうち約12%で3位を占め、blood access由来の敗血症、呼吸器・尿路感染が主体である。その他、結核、心内・外膜炎、骨髄炎、虚血性腸管壊死など診断困難なものもあり、これ等は不明の熱として処理されることもある。以上の諸事項について臨床経験にもとづいて考察を加えた。