抄録
心臓手術の前後において, 機械的補助循環法, とくに大動脈内バルーンパンピング法および左心補助人工心臓を施行した症例は, 各々110例, 3例であるが, うち多臓器不全を来して死亡したと思われるそれぞれ13例と2例の計15例について, retrospectiveな総括を行った。その結果, 多臓器不全の中核を形成すると思われる低心拍出量症候群と腎不全に対しては, 術中心筋保護法の徹底化や体外循環中の全身血流の維持が, 予防法として重要であることが示された。また, 基礎疾患の病態によって, 各臓器の障害が潜在的に進行し, 長期化すれば, いかなる手術によって心機能を回復しても, また機械的補助循環法による循環維持を行っても, 多臓器不全となることが多かった。すなわち, 術前から合併しているMOFや, 術中に形成された潜在的なMOFに対しては, 補助循環法も限界を有すると思われた。