人工臓器
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Single Artificial Heart (SAH)による長期循環維持に関する研究
高野 久輝中谷 武嗣福田 幸人梅津 光生野田 裕幸安達 盛次松田 武久岩田 博夫妙中 義之田中 隆高谷 節雄林紘 三郎中村 孝夫関淳 二阿久津 哲造曲直部 寿夫
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1986 年 15 巻 2 号 p. 592-595

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抄録

Single artificial heart (SAH)とは, 機能を停止した心臓に代わり, 左心系に挿入した1つの血液ポンプのみで, 全身の循環維持を計る方法である. 今回山羊を用いた慢性実験で長期間の循環維持に関し検討を加えた. (1) PVR.I(肺血管抵抗×体重)が10,000-15,000 dynes. sec. cm-5. kg以下であれば, 右房圧を10-16 (-18) mmHgに保つ事により, 全身の循環維持(血流量が80ml/kg/min以上)が可能であり, 山羊は普通の生活が可能であった. (2) RAPを高く保つために, 胸水や腹水の貯溜を認め, 頻回の胸腔穿刺を必要とした. (3)胸水の貯溜は総蛋白量を高く (6.0g/dl以上) 保つことにより, 軽減せしめ得ることを見いだし, 32日間の長期生存例を得た. (4)臨床におけるFontan手術のごとく, 人間においてもSAHによりかなり長期間循環を維持せしめ得るものと考える. LVAD施行の心停止や心室細動は, 本法の原理に基づき対応でき, 回復不能の場合でもTAH置換や心臓移植までの時間を十分に稼ぎ得ると考える.

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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