抄録
補助心臓に使用するのにいかなる弁が適切かをin vitro試験において取得した水撃のデータをもとに検討した. 試験弁は従来から用いているBjork-Shiley弁(B-S), B-S弁のステント部を強固にしたモノストラット弁(BS(MS)), BS(MS)のディスクをデルリンに置きかえた人工心臓用試作弁(BS(MSD)), 臨床用人工心臓JARVIK-7に使用されているHall弁(M-H), それに現在我々が開発中のConduit―体型のポリウレタン弁(P-U)の5種類である. 実験の結果, 1) BS(MS)の水撃値はB-Sよりも高く, 流入弁として使用した場合, ディスクが不安定な動きをおこす領域が存在した. 2) BS(MSD)では同じ構造であるにもかかわらずBS(MS)よりも水撃は軽減された. 3) M-HはB-Sよりも若干高値の水撃値を示した. 4) P-Uは閉鎖応答性が良好であるため, ディスク弁より20~50%も水撃の値を低減させることができた. 5) 人工心臓の水撃の大小は弁の種類によるちがいよりもむしろ駆動方法を変更する効果が大と思われた.