抄録
通常の血液透析や血液濾過法が施行困難なmulti―organfailure (MOF)に対し, 超小型血液濾過器と重曹補充液を用いた持続的血液濾過法(CHF)が有効であることを報告してきた。
今回, 24~85才の22例のMOF症例に重曹補充液を用いたCHFを施行し, 臨床効果を検討した。CHFはQB60~100ml/hr, QF1l/hrを原則とし, 最長88時間, 最大1症例につき17回, 計71回施行し, 22例中8例(36.4%)で危機的状況よりの離脱が可能であった。合併症, 障害臓器では, 肝不全, DIC, 乳酸性アシドーシス合併例での死亡率が高率で, CHFによっても血圧維持が困難ないし充分な置換液量をとることができなかった症例であった。一方, 心不全では46%が生存し得た。本法は体外循環血液量が極めて少なく, またアセテートを使用せずに緩徐な治療を行なうため循環系に与える影響が軽微で, このような点から, 腎不全を合併した, 危機的な多臓器障害症例の治療に有効な手段と考えられた。