抄録
左室補助人工心臓(LVAD)駆動中に左室機能を評価する目的で, 超音波パルスドプラー法により左室流入血流動態を測定し, これに及ぼす前負荷および心筋虚血の影響について検討を加えた。雑種成犬7頭を用い, 左房脱血, 大動脈送血でLVADを装着した。駆動前(pre), 駆動後(post), および駆動中虚血心作成後(CL+LVAD)の各時期に, 左室流入血流動態を測定し, 左室急速流入期ピーク流速(R), 平均加速度, 平均減速度, 心房収縮期ピーク流速(A), 流速比A/Rを求めた。バイパス率は, post 52~76%, CL+LVAD 58~89%であった。preとpostの間では, Rのみが47.4±4.0から37.9±6.7cm/secへと有意に低下した。postとCL+LVADの間では, Rは37.9±6.7から23.7±11.4cm/secへと有意に低下し, A/Rは0.73±0.17から1.37±0.37へと有意に増加した。この結果A/Rは前負荷の影響を受けにくいこと, およびLVAD駆動中でも心筋虚血の発生は, A/Rを増加させることが示唆された。