抄録
Björk Shiley convexoconcave (BSCC)弁, Björk Shiley monostrut (BSMS)弁及び, Duremedics (DM)弁による僧帽弁置換例をとりあげ, 3つの人工弁の臨床的評価を行った。症例数は, 各々70, 12, 17例であり, 早期死亡はBSCC弁で7例(10%), BSMS弁で1例(8%), DM弁はなかった。術中の弁機能不全は, BSMS弁の2例にstuck valveが発生した。1例は再弁置換, 他の1例は計3回の開心操作が必要であった。術中圧測定から求めた有効弁口面積の比較では, 3群共にほぼ満足し得る値を示した。特にDM弁は使用弁サイズが小さいにもかかわらず, 最も大きな有効弁口面積を示し, 血行動態面では優れていた。術後の溶血に関して, 術後1カ月目のs-LDH値は, BSCC弁で290IU/dl, BSMS弁で410IU/dl, DM弁で520IU/dlと後2者が有意に高かった。特にDM弁では, 術後早期に溶血性貧血を来す例が多く, 約2/3の症例で輸血を必要としたが, その後に貧血を生じた例はなかった。