抄録
近年体外循環下開心術が免疫能に与える影響について種々の検討がなされているが, 術後の感染防御機構上重要な役割をはたしている網内系機能に対し体外循環下開心術が与える影響については未だ検討がなされていない。そこで体外循環下開心術症例, 肺癌手術症例に対し血漿フィプロネクチン値及び網内系貪食指数より網内系機能を検討し, 併せて免疫グロブリン, 補体に対する影響との比較も行なった。更に体外循環前後の血漿フィブロネクチン値の比較も行ない以下の結果を得た。1. 体外循環下開心術後は血漿フィブロネクチン値すなわち網内系オプソニンは有意な変動は示さないものの, 術後早期には手術侵襲に対する貪食能の反応性亢進を認めず網内系機能は抑制されていた。また体外循環は網内系に対し負荷をかけオプソニンを消費していた。2. 免疫グロブリンは開心術特有の影響は受けず, 補体は術直後classical pathwayに影響を受けるが一過性であった。