2020 年 31 巻 6 号 p. 562-570
心房細動患者の塞栓症予防には抗凝固療法が必要であると考えられている.一方,冠動脈疾患患者,特に冠動脈ステント植え込み後の患者の抗血栓療法は抗血小板療法が重要な役割を果たしている.なかでもステント植え込み直後の抗血小板薬二剤併用療法(dual antiplatelet therapy: DAPT)はステント植え込み後の治療法として確固たる地位を築き上げている.しかし,抗血栓作用のある薬剤の複数の使用は出血合併症を大幅に増加させる.それでは,心房細動患者がステントを植え込まれる場合にはどのような抗血栓レジメンが必要になるのであろうか.ステント植え込み直後に関してはいくつかの大きな臨床試験が行われ,ステント植え込み直後の段階では抗凝固療法と抗血小板療法一剤(P2Y12阻害剤)にするのが基本となる.また,ステント植え込み後慢性期は,我が国において行われたAFIRE試験が大きなエビデンスとなり,抗凝固療法のみにするのが基本となった.本稿では,心房細動患者がステントを植え込まれる際の抗血栓療法について,冠動脈領域における血栓症治療の歴史も紐解きつつ解説したい.