抄録
ローラーポンプを高回転で使用すると低回転時に比ベクランプ回数が2~3倍と多く, 血液成分破壊にも影響を及ぼすと予測されるがその報告はない。今回, オクルージョン部分の径のみ異なる2種の閉鎖回路を作製して行ったin vitroの実験では, 血清遊離Hb量は高速回転時は低速回転時に比べ有意に高値を示した。後天性弁膜症を対象とした臨床実験では, 高回転気泡肺の組み合わせは, 血小板減少率, 血清遊離Hb量とも多ぐ, 血球成分の破壊が特に強かった。フィブリノーゲン, AT-IIIにはローラーポンプの回転数, 人工肺の種類の影響は認められず, 術後出血量にも差がなかった。ローラーポンプの回転数の影響は血球成分に関しては, 気泡―膜型肺の差に匹敵することもあり, 高速回転で使用すると, 膜型肺の有利さを減弱させる可能性があると思われた。