人工臓器
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ラット腎臓に挿入したVinyl copolymer針から放出した制癌剤の滲透・拡散におよぼす滲透促進剤の影響
吉田 勝浅野 雅春嘉悦 勲今井 強一真下 透湯浅 久子山中 英寿鈴木 慶二森田 泰司
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1987 年 16 巻 3 号 p. 1333-1336

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抄録

シスプラチンを含むvinyl copolymer針をウィスター系ラットの腎臓に埋入した。この針からシスプラチンが徐々に放出され、結果的に針周囲組織が壊死化した。針周囲の組織壊死の立体像はラグビーボール状で、その中心に針が位置している形態を示した。この場合、針表面から外側へ向っての壊死の組織形態は凝固壊死層(a)、融解壊死層(b)そして非壊死層(正常組織)からなることが分った。このような組織形態はurokinase (フィブリン溶解酵素)、liPase (脂肪分解酵素)およびtrypsin (タンパク質分解酵素)のような酵素をシスプラチンと共存させた時に顕著に変化した。すなわち、針埋入から7日目で比較した場合、非酵素もしくはurokinase含有系の壊死形態は殆んどが凝固壊死であったのに対し、lipaseおよびtrypsin含有系のそれは逆に融解壊死からなっていることが組織所見(HE染色)から判明した。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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