1988 年 17 巻 3 号 p. 1133-1136
SJM弁の抗血栓性についてS-Eボール弁との比較検討を行った。S-Eボール弁で単弁置換をうけた132例と、SJM弁で単弁置換をうけた135例を対象とした。僧帽弁置換群の血栓塞栓症の発生頻度は、S-E非被覆弁2.14%/患者・年、S-E被覆弁1.82%/患者・年、SJM弁1.69%/患者・年であった。術後7年のThrombo-embolism Free RateはS-E非被覆弁で60.5±7.5%、S-E被覆弁で83.9±5.2%、SJM弁で92.4±3.1%であった。大動脈弁置換群の血栓塞栓症の発生頻度は、S-E非被覆弁1.36%/患者・年、S-E被覆弁、SJM弁では0であった。術後7年のThromboembolism Free RateはS-E非被覆弁75.6±10.6%、S-E被覆弁80.0±10.3%、SJM弁96.7±3.3%であった。SJM弁の抗血栓性はS-E非被覆弁に比し良好であったが、S-E被覆弁に比べ著しく向上したとはいえず、近年における血栓塞栓症の減少には厳重な抗凝固療法の施行も寄与していると考えられる。