抄録
成人開心術症例で、体外循環中(CPB)の補体系の変動、白血球の動態及びマロンジアルデヒド(MDA)の経時的変化を検討した。CPB開始後直ちに補体系は活性化され、30分値をピークとする著明なC3aの増加を認めた。白血球数はCPB開始後直ちに減少したが、大動脈遮断解除に伴い急増し、CPB終了後60分でコントロールの213%に達した。肺内での白血球の集簇はCPB中持続してみられたが、特に大動脈遮断解除後に有意に増加した。MDAはCPB開始後早期及び大動脈遮断解除後に増加したが、その時期は各々低体温導入期及び復温期に一致した。白血球の肺内集簇と肺循環系で産生されるMDAとの間には明らかな関連はなかった。しかし、大動脈遮断解除後の左房血MDAの増加は白血球の肺内集簇の有意の増加を伴うことから、好中球に由来する活性酸素による障害をある程度反映しているものと考える。