1988 年 17 巻 3 号 p. 888-891
左心バイパス補助(LVAD)施行時の心房間逆短絡は動脈血酸素化を著しく低下させ, 末梢諸臓器のショックからの回復を疎外するだけでなく, 致命的な多臓器不全(MOF)の原因となりうる。LVAD施行例では術中に卵円孔開存(PFO)の有無を確認し小さなPFOでも術中に閉鎖すべきとされているがその確認は容易ではない。開心術中の心内血流動態の評価に最近極めて有効とされている経食道ドプラー断層をLVAD施行症例に応用し特に心房レベルの逆短絡の評価に興味有る所見がえられたので報告する。51才男子の心室中隔破裂根治手術後の左心バイパス補助症例で, 右心不全の増強と共に逆短絡の増加が経食道ドプラー断層により観察され, 患者の動脈血酸素化を悪化させMOFの進行に悪影響を与えたと考えられた。Autopsyで径1mmの卵円孔開存が確認された。PFO短絡孔は小さくとも臨床上有意な逆短絡が観察された場合再手術によりPFOは閉鎖すべきと考えられた。