抄録
近年、完全人工心臓動物の病態生理に対する心房性ナトリウム利尿ポリペプタイド(ANP)の関与が検討されているが、本研究では、完全人工心臓装着動物において急性に心房圧を変化させた時の血中ANPの変化を検討すると共に、完全人工心臓装着前後において合成ANPを経静脈的に投与し、組織のANPに対する感受性の変化、およびANPの治療薬としての可能性の検討を行った。その結果、1) 完全人工心臓装着後は急性の心房圧変化に対する血中ANPの変化の反応性は著明に減弱あるいは低下しており、2) 完全人工心臓装着前においてはANPの経静脈的投与に対して明らかなナトリウム利尿が認められ、症例によっては血圧、中心静脈圧の低下も認められたのに対し、装着後ではこれらが認められなかった。これらの原因に関しては現在検討中であるが、完全人工心臓装着動物においては、心房におけるANPの分泌能、および組織におけるANPに対する反応性が共に低下していることが示唆された。