抄録
1974年10月より1981年1月までにStarr-Edwards(S-E)弁を用いて大動脈弁置換術を行った27例のうち, 手術死亡2例(7.4%)を除く25例を対象に長期予後を検討した。追跡期間は3~13.6年(平均9.3年), 累積で233pt-yrsであり, 100%の追跡が可能であった。術後, 全例にワーファリンによる抗凝血薬療法が施行されていた。遠隔死亡は4例(1.7%/pt-yr)で, 術後10年におけるactuarial survival rateは82.8±7.8%であった。血栓塞栓症, および抗凝血薬療法による出血性合併症の発生は認めなかった。S-E弁に起因する合併症は3例(1.3%/pt-yr)のみで, 合併症の非発生率は10年で87.0±7.0%と良好であった。合併症の内訳はcloth wearによる溶血性貧血が2例(Model 2320, 2400各1例), 感染性心内膜炎が1例で, いずれも再弁置換術を施行した。本弁は耐久性, 抗血栓性に優れ, 遠隔期(平均10年)におけるNYHA心機能分類では88%がI~II度と良好であり, 臨床的にほぼ満足できるものであった。