抄録
1983年9月から1988年3月までに、教室においてSt. Jude Medical弁にて僧帽弁置換術を施行した99例を対象として、その成績を検討した。対象症例には、合併手術を同時施行した症例をすべて含めた。再手術症例は33例(33%)であった。術後30日以内の直接死亡例は7例(7%)であり、遠隔期の死亡は5例であった。1986年6月を境に弁固定方向をantianatomical positionからanatomical pnsitionへ変更している。この2群間で、血清LDH値を比較検討したが、術後早期には差がなく、遠隔期においては、anatomical positionで軽度ではあるが、有意な高値を認めた。しかし、この数値も、臨床的には充分満足出来る値にとどまっており、経過観察中に輸血を要した経験もない。従って、弁組織温存術式の割合が増加している今日、温存弁下組織による弁葉の可動制限が、危惧される場合には、いずれの弁固定方向でも、問題はないと判断された。